ピーター・ジャクソン「彼らは生きていた」シネ・リーブル神戸
ほとんど引きこもっていたような二月が終わろうとしていました。世間は新型のインフルエンザの話題で持ちきりのようです。ほんとに出かけていく気力を失います。
インフルエンザといえば、最近、第一次世界大戦物が目につきます。予告編を見ていて惹かれたのがこの映画でした。「ロード・オブ・ザ・リング」という映画を見ていませんからピーター・ジャクソンとか言われても、実は誰のことかわかりませんでした。妙に美しい戦場の色彩に惹かれたのでした。
神戸駅から元町商店街を歩いて、シネ・リーブルまでやってきました。いつものコースです。途中のイスズ・ベーカリーでアンパン、カレーパン、ソーセージ・パン、あれこれ買って、コーヒーは持参していましたから、これで映画鑑賞昼食です。
久しぶりのシネ・リーブルは、やっぱり、すいていました。コーヒーを一口飲んで、ソーセージ・パンをかじっていると、白・黒の記録映画の画面で映画は始まりました。見たのはピータ・ジャクソン監督の「彼らは生きていた」です。
イギリスから、戦争に行って、生きて帰ってきた人たちの「ことば」が語られていて、それが、今現在も生きている人が、実際にしゃべっているのか、すでに死んでしまっている人の「ことば」を誰かが、セリフとして読んでいるのかはわかりません。
イギリスは、この戦争に1914年に参戦したわけですから、いくら若くても、当時十代後半の人たちが、生きていれば120歳を越えるわけです。だから、誰かが従軍記録を読んでいる映画だとは思いますよ。
何人もの「行って、帰ってきた話」が続いていますが、画面は記録映画のままです。久しぶりのウトウト感に襲われて、ハッと目覚めると世界が一変していました。
さっきまでの記録映画的チカチカ白黒画面が、フル・カラーの現代映画画面に、世界で最初に創られたイギリス軍の「マーク」型戦車、砲塔のない菱形で全身キャタピラの戦車ですね、が写っていました。
ここから、戦場の様々な場面が、リアルなカラー映像で、音も人間の表情や言葉も、今、そこにあるシーンとして映し出されてゆきます。残念ながら飛行機と艦船のシーンがあったかどうかは、気付きませんでした。しかし、それにしても見とれてしまいました。ナレーションは続いています。
そして再び眠くなってしまいました。画面の中で動いている部分と、止まっている部分があるように感じました。その視覚的な違和感が気になり始めると、眠さが拡がってしまうのです。
戦場の青年たちは生き生きと生き返り、戦場での束の間の笑いに興じています。砲弾の炸裂するシーンは、もう、美しいというしかない様子です。地面に転がっている山盛りの死体たちはリアルに、もう一度、死んでいました。
しかし、何かが、決定的にずれているような、ある不安な感じが「眠り」に引き込もうとしているようでした。これは、ある種のカン違い、錯覚に気付かせない、大いなる錯覚じゃないでしょうか。そうでもないんでしょうかね。
再び白黒の画面に戻り、懐かしい音楽が流れてきました。何だか、いいようのない、ホッとした気分を味わいました。
いい、悪いはともかく、映画だからできることだと思いました。素直にドキュメンタリー映画とは言いにくい気分でした。それにしても、これには、相当な手間がかかっていることは間違いないだろうし、すごいことができる「時代」になったものだと思いました。
監督 ピーター・ジャクソン
製作 ピーター・ジャクソン クレア・オルセン
製作総指揮 ケン・カミンズ テッサ・ロス ジェニー・ウォルドマン
編集 ジャベツ・オルセン
音楽 デビッド・ドナルドソン ジャネット・ロディック
2018年 99分 R15+ イギリス 原題「They Shall Not Grow Old」
2020・02・27シネ・リーブル神戸no44
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