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ロジャー・メインウッド「エセルとアーネスト ふたりの物語」元町映画館
2019年の12月に「ロング・ウェイ・ノース」というアニメーション映画を元町映画館で見ました。その時に予告編で見た映画が、この映画です。 チラシをご覧ください。主人公の二人「エセルとアーネスト」が一人の少年を中に互いに抱き合っています。アーネストは協同組合の牛乳配達員、エセルはその妻です。少年はやがて成長して、下方の写真の男性、絵本作家のレイモンド・ブリッグスになります。 レイモンド・ブリッグスは、1934年の生まれで、今年86歳。我が家では「さむがりやのサンタさん」と「サンタのたのしいなつやすみ」の二冊を「愉快な仲間たち」が子供の頃、読んだと思うのですが、「風が吹くとき」という絵本でとても有名になった人です。 そのブリッグスが、自分自身が65歳を越えた頃、両親の出会いから死までの人生を「エセルとアーネスト」という絵本にしたそうです。 映画は実際に絵を書いているレイモンド・ブリッグス(多分)の仕事場のシーンを映し出します。実写です。影になっていてよく見えませんが、かなり高齢な男性が、紅茶にミルクを足して飲みながらふと、こんなことばをつぶやきます。 「こんな、何の変哲もない夫婦の話が、どうして、こんなに評判がいいんだろう?」 それから、彼は仕事机に向かい、机の上の白い紙に、鉛筆で誰かの姿が書きはじめます。だんだん輪郭がアーネストになってゆきます。色がついて、動き出して、アニメーションの「エセルとアーネスト」が始まりました。とりあえず、最初の「うまいもんやな!」です。 ロンドンの街の、漫画風の地図が映し出されて、地図の中で人が動いています。ブリッグスの絵が動いています。 窓を拭くエセルはメイドさんで、自転車で通りかかる青年アーネストに恋をします。それが物語の始まりでした。 結婚、ローン、マイホーム、出産。戦時下の暮らし。戦後の社会。子どもの成長と自立・・・・。 イギリスの労働者階級のごく当たり前の生活がブリッグスの素朴な絵のタッチそのままに、1930年代から半世紀にわたって描かれていました。 庭に花が咲いたことを喜び、自転車のハイキングで二人の夢を語る。幼子を疎開させ、防空壕を掘らなければならない戦時を嘆き、一方で、戦地で息子を死なせた友人を心からいたわる。勝手に学校をやめた息子に絶望し、自家用車を手に入れらる時代に驚く。そして息子夫婦に子どもができないことを寂しく思いながら老いてゆく。 それが「エセルとアーネスト」の「幸せな」人生の姿でした。あの日、窓越しに出会ったことの「よろこび」の淡い光が、二人の生活の上に静かにさし続けているかのようでした。 しかし、光はやがて消えてしまいます。エセルは目の前にいるアーネストを見失い、一人で旅立ちます。エセルに忘れられたアーネストも、やがて、一人ぼっちでこの世を去りました。 「生きる」ということの、途方もない「哀しさ」をブリッグスは描いていると思いました。最後に、痩せさらばえた父の遺体と出会う息子の姿を映し出して映画は終わります。エンディンテーマが流れて、エンドロールが終わっても涙が止まりません。 ぼく自身の年齢が、そう感じさせている面もあるかもしれませんが、傑作でした。 監督 ロジャー・メインウッド 製作 カミーラ・ディーキン ルース・フィールディング 製作総指揮 レイモンド・ブリッグズ ロビー・リトル ジョン・レニー 原作 レイモンド・ブリッグズ 編集 リチャード・オーバーオール 音楽 カール・デイビス エンディング曲 ポール・マッカートニー 声優 追記2020・03・05 ボタン押してね! ボタン押してね! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023.12.27 22:48:31
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