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カテゴリ:映画 アメリカの監督
テレンス・マリック「名もなき生涯」シネ・リーブル神戸
今日は2020年の3月9日です。昼前の高速バスに乗って三宮に出かけました。さほど混みあう路線ではありませんが、十数人の乗客が乗っていました。マスクをしていないのはぼく一人でした。ぼくは、今のところマスクはしません。理由は簡単でマスクがないからです。いったい、皆さんはどこでマスクを手に入れていらっしゃるのでしょう。でも、マスクを持っていても、多分、ぼくはマスクをしないでしょう。風邪をひいていないからです。同居人のチッチキ夫人は休みの日には手作りマスクを作っていますが、職場の必要に備えてのことのようです。 自由な存在とは、何かするかしないかは、その人が決めるという存在のことである。絶対的存在という、その絶対的とは、「かけがえのない存在」といってもいいし、「取り換えの効かない存在」といってもいい。(中略) 農夫フランツの「不幸」は最初で最後のというべき「してはいけないこと」に気付いてしまったことにありました。 最初の「してはいけないこと」は、次々と、新たな「してはいけなかったこと」にフランツを出合わせます。 「村の仲間と仲たがいすること」、「家族を見捨てること」、「神を冒涜すること」、「命を粗末にすること」そして「美しい故郷を捨てること」。 最初の「してはいけないこと」が「善」であるのか「悪」であるのか、一人だけ「してはいけないこと」に固執するのは身勝手な生き方ではないのか、葛藤するフランツに答えはありません。ただ苦しむだけです。 村に残された妻ファニも、村人達の冷酷な仕打ち、苛酷な農作業、幼い子供たちの養育、希望が失われた生活に苦しみ続けています。 死刑執行を前にした面会室で、フランツとファニはやっとのことで再会します。無言の夫フランツの前で、妻ファニは叫びます。 「愛している。あなたのJusticeを貫いて!」 「奇跡」が起きたのです。岩田靖夫が言う「自由な絶対的存在」であるフランツは、彼の「かけがえのない身勝手」にもっとも苦しめられている「他人」である妻ファニから「愛している。」という応答を受け取るのです。 この映画はテレンス・マリックという監督の自己満足の作品でしょうか?ちがうと思います。映画の半分は刑務所における農夫フランツの苦闘を追っていますが、残りの半分で、「自由な絶対的存在」がもたらした過酷を生きるファニと家族を丁寧に描いています。その結果「人間」と「人間」が出会う「奇跡」を描くことができたのではないでしょうか。 この映画では、「神」もまた挨拶が届かない「他者」でした。そういう意味では信仰への帰依を描いているとは、とても思えませんでした。 余計なことかもしれませんが映画を見ていて謎だったのは英語のセリフとドイツ語の背景でした。ドイツ兵のしゃべるドイツ語には字幕が出ないのですが、なにが意図されているのか、よくわかりませんでした。だいたい、なぜ、全部がドイツ語じゃないのか、という気分でもありますが。 ついでですが、フランツの同房の囚人として登場した男、ある場面で、死刑執行の場について印象的に語る男ですが、「希望の灯り」という映画で主人公を演じていた フランツ・ロゴフスキという俳優だったと思います。とてもいい味の演技でした。 監督 テレンス・マリック 製作 グラント・ヒル ダリオ・ベルゲシオ ジョシュ・ジェッター エリザベス・ベントリー 製作総指揮 マルクス・ロゲス アダム・モーガン ビル・ポーラッド イー・ウェイ クリストフ・フィッサー ヘニング・モルフェンター チャーリー・ウォーケン 脚本 テレンス・マリック 撮影 イェルク・ビトマー 美術 セバスチャン・クラウィンケル 衣装 リジー・クリストル 編集 レーマン・アリ ジョー・グリーソン セバスチャン・ジョーンズ 音楽 ジェームズ・ニュートン・ハワード キャスト アウグスト・ディール(フランツ・イェーガーシュテッター:農夫) バレリー・パフナー(ファニ・イェーガーシュテッター:フランツの妻) マリア・シモン (レジー:ファニーの姉) ブルーノ・ガンツ(判事) 2019年・175分・アメリカ・ドイツ合作 原題「A Hidden Life」 2020・03・09シネ・リーブル神戸no47 追記2020・03・12 ボタン押してね! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024.01.08 22:08:17
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