アニエス・ヴァルダ「アニエスによるヴァルダ」元町映画館 2020年4月、映画と映画館がピンチ!でした。「新コロちゃん」と笑っていたシマクマ君もマジ顔になりつつある今日この頃ですが、そんな「空気」が世間に充満するなかで、ぼくがこの二年間お世話になっている「元町映画館」と「パルシネマ」が健闘していました。
休業や新コロちゃん被害に対する責任を放棄したかに見える政権の有様には驚きをこえた憤りを感じます。実際には開けていても、「自粛」という言葉におびえた社会にあって、それぞれの映画館や居酒屋にお客がくるわけではありません。小さな映画館や居酒屋はつぶれてしまえという態度です。
その、小さな映画館の一つである元町映画館が3月の末からの企画もので上映していたのが「アニエス・ヴァルダを知るための3本の映画」でした。
アニエス・ヴァルダという人は、昨年、2019年に90歳で亡くなった、フランスの映画監督ですが、「シェルブールの雨傘」のジャック・ドゥミの配偶者というほうが見当がつきやすかもしれませんね。フランス・ヌーベルバーグの祖母と呼ばれてきたそうです。そのおばーさんが亡くなる直前に撮った映画が「アニエスによるヴァルダ」です。
なにがおもしろいかって問われると答えるのは難しいですね。どこかのセミナーで自作を語るアニエス・ヴァルダの姿と、彼女の実作のシーンをコラージュしたドキュメンタリーなのですが、これがなんともいえず面白かったんです。
無理やり説明するなら、本当は、方法にとらわれない「方法の人」なのでしょうが、そういう解説で理解する以前に、まずアニエス・ヴァルダという人の「たたずまい」が面白いというしかありません。
見てから時間が立ってしまったので、彼女が「海」とか「浜辺」が好きだということ以外ほとんど覚えていないのですが、見るからに強烈な意志の人なのだけれど暑苦しくない。ノンキそうでどっちかというとユーモラスなのだけれど冷静。だいたいフィルムに映っている様子が、ウケでも狙っているのかといいたくなるほどで、笑えますが、何の衒いもない。要するに自由なんです。
この写真の、この頭、帽子じゃないんですよ。もちろん鬘でもなさそうで、東洋的には河童の親玉でしょ。その河童の親玉が猪八戒みたいに小太りで、堂々として、「海」を見て座っているんです。面白がり方は悟空で、眼力は三蔵法師かもしれませんね。で、やりたいことはやり尽くしたんでしょうか、90歳まで映画を撮ったんです。
彼女が自宅で、映画についてのおしゃべりをするテーブルにネコのズググが座っているシーンがあるのですが、ネコ好きの方はこのシーンを目にしただけでも、ちょっと得したとお思いになるに違いありませんよ。えらい存在感のあるネコなんです。
この存在感は何なんだ、というのはアニエス・ヴァルダその人に感じる驚きと同じでしたよ。なにせ、こうなったら、残りの映画を見るしかありませんね。
監督 アニエス・ヴァルダ
製作 ロザリー・ヴァルダ
キャスト
アニエス・ヴァルダ
2019年 119分 フランス
原題「Varda by Agnes」2020・04・06元町映画館no41
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