アニエス・ヴァルダ「ダゲール街の人々」元町映画館
見終わって、この映画が日本初公開だということにとても驚きました。
「世界には、日本人が知らないスゴイ映画がきっと、他にもたくさんあるに違いない。」
そんな気分になりました。
もっとも、ぼくはアニエス・ヴァルダという映画監督を、このシリーズを偶然見る以前は見たことも聞いたこともなかったわけですから、素朴に「世界にはぼくが見たことのない素晴らしい映画がたくさんあるに違いない。」でもよかったわけで、むしろそっちの方が「見られてよかった。」という気分にはぴたりと重なりますね。「日本人」なんて関係ありません。
ドキュメンタリー映画なのですが、昨秋シネ・リーブルで見た「カーマイン・ストリート・ギター」や想田和弘の「港町」に似ていると思いました。
「カーマイン・ストリート」とは、人が暮らしている「通り」のお店のお話しというところで、一軒のお店にカメラが入って、かなりな至近距離のシーンを重ねていくところが似ていました。「邪魔にならないの、カメラ?」っていう感じのところです。
「港町」とは何が起こるかはカメラに任せているところが、これは、「とても」をつけたくなるくらい似ていると思いました。編集で作り上げていることは両者に共通していて、想田和弘の原点の一つがここにあるという感じでした。
映画はアニエスが、、当時、住んでいた「通り」の生活を撮ったようです。顔見知りのパン屋、肉屋、香水の調合士の営む雑貨屋が、どの店も夫婦で働いていて、それぞれの夫婦のニュアンスが、それぞれ異なっていて面白いのです。そこから「通り」や、町の「集会所」へとカメラは巡ります。
肖像写真のように映し出される街の住人達を見ながら、「通り」の名前がダゲレオタイプが発明された町だったことを暗示していることを思い出したり、手品師の登場する街の集まりでの手品のシーンに、「映画の手品」の秘密が隠されているのを感じたり、見どころは満載でした。
何よりも、雑貨屋のおやじとその妻の姿に対する無言の「観察」は、想田和弘の映画を彷彿とさせる人間の物語の記録でした。
ナレーションも何もなし、二人の会話とお店に来た客の声だけです。チラシの左下の夫婦ですね。
約80分、まったく退屈しませんでした。これが50年前に撮られてたんですからねえ。映画というのもは奥の深いものだと思いましたね。
監督 アニエス・バルダ
撮影 ウィリアム・ルプチャンスキー ヌーリス・アビブ
1975年製作/79分/西ドイツ・フランス合作
原題「Daguerreotypes」2020・04・08元町映画館no43
追記2020・05・19
非常事態とかで映画館が閉まって40日経ちました。開いていた最後の日あたりに観た映画の感想がまだ書けずに残っています。別に書かなくてもいいのですが。
今日は5月19日で、映画館の再開の知らせも聞こえ始めました。このまま無事に終息するのを祈るばかりですが・・・。
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