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カテゴリ:読書案内「丸谷才一・和田誠・池澤夏樹」
【BookCoverChallenge no5】
丸谷才一・和田誠「女の小説」(光文社文庫) 「1週間で7冊」のブックカバーチャレンジの最中です。「本」について「焼く」、「印刷する」、「装丁する」、「図書館で借りる」とやって来ましたが、今日は「紹介する」ですね。3日目の和田誠さんの紹介で、さあ、つぎはと考えたのが装丁家和田誠が好きだった人、この「が」はそのまま主格なのか、和田誠さん「を」という意味の目的格なのか難しいですが、何となく相思相愛的な人たちとして思いうかんだ人が数人います。 最初に浮かんだのが村上春樹ですね。ところが彼は安西水丸という、もう一人のイラストレイターとも長いつきあいです。 「若紫」は、作りが派手で、読みでがある出来のよい巻だ。当時から評判だったらしく、藤原道長の邸の宴会で、酔っぱらった藤原公任が、紫式部に「あなかしこ、このわたりに若紫やさぶらふ」と言ったという話が「紫式部日記」に書いてある。 ねッ、読み始めるとやめられなくなるのはぼくだけではないと思いますよ。丸谷才一のブック・レビューの特徴は、作品や著者、その周辺事実に対する、おそるべき博覧強記なのです。 たとえばここでは道長と公任です。実はこの二人、同い年でライバル。血筋のポジションとしては公任に分があったはずなのですが、結果は道長の一人勝ちで「一家立三后、未曾有なり」と、もう一人のライバル実資(さねすけ)にあきれられた話は有名です。 公任は「三舟の才」というわけで、文才で名を遺しますが、実は同世代の出世頭だったことは、案外知られていませんね。 藤原公任が「頭の中将」に一番乗りしたころ、道長は公任や兄道隆の息子たちの栄達を遠くから眺めていた身分だったのですが、あっという間に道長の「わが世」が始まってしまいます。その間に、公任は「頭の中将」在位期間歴代一位という、ある意味、不名誉な記録保持者として名をのこしてしまうのです。 紫式部が執筆にあたって「頭の中将」を思い浮かべたとすれば、この人だった可能性だってあるかもしれませんよ。 なんてことを丸谷才一は先刻御承知に違いなくて、ここでは軽く流しましょうとでもいう書きぶりが憎いんですよね。 第二章はフランスの閨秀作家コレットの小説「牝猫」の紹介です。バトンをくれたSさんは大のネコ好きですが、この章の中には「ミャオ」、「ムルクルニャオ!」、「ネウネウ」、「ムゥルーィン」、「「ニヤア」という、古今東西、いろんな作品で描かれているネコの鳴き声が紹介されています。 もちろん「牝猫」ではネコが準主役です。名前はサア。他にJ・ジョイスの「ユリシーズ」のネコは有名かもしれませんね。英語で綴れば「マーキュリー」という鳴き声から、主人公ブルームの「旅」への連想が始まるカギになります。まあ、旅って言ってもダブリンの町をめぐるだけなのですがね。 谷崎潤一郎の「猫と庄造と二人のをんな」に出てくるのはリリーという牝猫、そこから「源氏物語」で女三宮が飼っていたネコのことが思い浮かんで、その唐わたりの牝猫の鳴き声を「寝む寝む」と誘いの声に聴く柏木くんがまで登場します。 中の一つはフランス語のネコの鳴き声ですが、それぞれどの作品の鳴き声かわかりますか? 蛇足ですが、15章で「女弟子であること」で紹介されているのがイザベル・アジェンデ、チリの大統領だった人の姪っ子ですが、ここで「師匠」とされているのが、コロンビアの作家ガルシア・マルケスでした。 この章では、マルケスの「百年の孤独」についても触れているのですね。一筆書きのような短い文章ではあるのですが、マルケスに関しての簡にして要を得た解説の章段になっていますよ。 まあ、このあたりの符合もうれしくて、5日目の本になったわけです。 さて今日は、仔猫のようなというのは失礼でしょうか、二月に一度、「本」を読んで、おしゃべりする会でお出会いする「美少女マコちゃん」にバトンをお渡しして、じゃあこれでバイバイ。六日目をお楽しみに。 ああそうだ、解答ですね。 追記 ボタン押してね! ボタン押してね! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024.04.11 23:39:27
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