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【BookCoverChallenge no6】
三島邦弘「計画と無計画のあいだ」(河出文庫) 【7日間ブックカバーチャレンジ】(6日目)(2020・05・25)です。 今日は「本」を「作って売る」出版社を、たった一人で作ってしまった人のお話しです。ヤッパリ「本」の話をするなら、思い出の文芸路線かな、なんて思いながら棚を見ていて、いやヤッパリこれにしようと路線変更しました。 「いろいろな人のいろんな話」がミシマ社に落とされるのも、いま自分たちがいる「こっち」の世界に広がりを感じてくださっているからではないか。 ここで、「こっち」というふうに言っているところはどこなのでしょう。それを考えるには、本の出版・流通・販売のあらすじをたどる必要がありそうです。 一応前置きで断っておきますが、ここから書くことはぼくが知っているつもりのことであって、正確な事実ではありませんのでご注意ください。 ここで書店に並んでいる本の価格を1000円と考えます。その価格の取り分はどうなっているのでしょう。思い当たる費用負担者と負担率はこんな感じです。 出版社原価(紙・印刷・製本・編集・出版・広告・倉庫)40%、作家・著述者(著作料)10%、取次会社費用30%、販売書店費用20%。大雑把に言えば、こんな感じでしょうか。実際は取次費用はもっと多く、小売店費用はもっと少ないと思います。 具体的な数字で言えば、本屋さんは1000円売って多くて200円の商売です。 本は再販商品ですから、普通の商品と違うのは「取次」というシステムが存在することです。むかし東販という取次会社の大阪の倉庫に行ったことがありますが、巨大な倉庫風の建物の内部が新刊本の山だったことに驚いたことがあります。書籍流通の関西方面基地だったのです。 出版社の方から見れば、取次会社の意向が「本」の売れ行きを左右しているらしいことは、駅前書店や大型書店で山積みされている本のライン・アップが全く同じ顔をしていることでわかります。そうなると、よく売れる「良書」は内容と関係が亡くなってしまいます。 村上春樹であろうが百田某とかのインチキ本であろうが、売れると予想された本はそうした書店の平台を山積みで占領し、飛ぶように売れる、みんなの「良書」が演出されます。一方で街角の小さな本屋には、極端に言えば一冊も並んでいません。 流通を握っている会社が儲けだけを指針にした独占販売網を作り上げているとぼくが考えるのはそういう現象からの推理です。 そういう、どこかインチキの匂いがする「文化の商品化」を「あっち」の世界だと考えたのが三島さんのやり方なのではないでしょうか。 おそらく、町の本屋さんが「ミシマ社」の本を棚に並べるには覚悟がいると思います。不良在庫化のリスクを自らが背負わなければならないからです。それでも、直接取引で本を売ろとしたときに出てきた言葉が「こっち」ではないでしょうか。 出来上がった本はどうやって売られているのか、書き手との出会いから本屋さんの店頭まで、実は読者が知らないドラマが山盛です。 でも、多分この本のいのちは、「こっち」を作り出したいと考えた三島さんの文章にあるんじゃないかというのが、ぼくの読みでした。 本屋さんと呼ばれる仕事が、出版社も町の書店も、大変な時代になっているんですね。 さて、今日は、いつも夜勤の医療現場から楽しいメッセージをくれる、大昔からの友達で、いつまでたっても「働く美少女ママ」に三人目のバトンを渡したいと思います。 無理せず、ノンビリやってください。
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最終更新日
2024.01.01 22:06:13
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