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ゴジラ老人シマクマ君の日々

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2020.07.18
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100days100bookcovers」(13日目)
田中美穂 『わたしの小さな古本屋』(ちくま文庫)

​​​​ 前回の​『風の谷のナウシカ』​からどう繋ごうか、と考えていたとき、「蟲」の文字で閃きました。​

​そうだ、「蟲文庫」があった。​​

​ しかも、そろそろこのへんで女性の著者を、というひそかな希望も叶えることができます。
 ​田中美穂『わたしの小さな古本屋』(ちくま文庫)​​​​​
​ 倉敷の美観地区の片隅で古書店​「蟲文庫」​を営む​田中美穂さん​のエッセイです。古書店は私にとって「好きな空間」のひとつで、古書店をめぐる小説やエッセイも大好き。たまたま出会った1冊ですが、​田中さん​の、なにも標榜せず、ただ淡々と自分の信じた道を迷わず歩む日常が、気負いのない穏やかな文章で綴られていて、愛読しています。​​
​​​​ 21のときに勤め人を辞めた​田中さん​は、ほぼ即日、古本屋を始めることを決心します。知識も資金も存分ではない状態で、店を探し、棚を作り、最初は売る本も少なく​てスカスカな日々、古書店のあがりだけでは食べていけなくて、店を閉めたあとの時間は郵便局のアルバイトに精を出し、なんとそれが10年も続きます。売る本が足りないときは、お菓子やグッズ、自分で制作したトートバッグなどを店に置き、店内をミュージシャンに弾き語りのスペースとして提供したりしながら、コツコツと店を続けてきました。今では書店や古書店がほかのものを売ったり、講演会をしたり、コンサートをしたりする業態は珍しくなく、しかもオシャレなイメージですらあるのですが、​田中さん​はもう30年近く前から、「オシャレ」とは無縁に、店を継続するひとつの方法としてそうしてきたのです。​​​
​​​​​​​​ ​田中さん​は知り合いの人から「あなた一日二十七時間ぐらいあるでしょう?」と言われたことがあるそうです。「店番が好き」と本書の中でも何度も書いている​田中さん​にとって、自分の店の中で本と過ごす時間はよほど豊穣だったのでしょう。彼女は、店番のかたわら、もともと深い興味を持っていた「苔」の観察を始め、ついに​『苔とあるく』​という本まで出版します。いまでは「苔に詳しい人」という顔も世間に知られるようになり、亀にも詳しいことから「苔や亀の相談所」のように蟲文庫を訪ねてくる人もあるそうです。​『胞子文学名作選』​というカルトな書物も編んでいます。岡山出身の作家、ことに好んで読む木山捷平を世間に紹介する役も果たしています。本に関わることの楽しさ、本と人との思いもかけない繋がりが、本書にはあふれています。​​​​​​​​
 この本を読んだ翌年、義父の法事で岡山へ行ったときに​蟲文庫​を訪ねました。美観地区のなかの古民家の一室で営まれている小さな本屋さんです。​田中さん​は無口で(きっとシャイなのでしょう)、話したのは購入した本のお勘定をしたときだけでしたが、私も世間話が苦手な方なので、放っておいてもらえる雰囲気も含めて、居心地の良い空間でした(ただときどき、古書店だと意識しないで入ってくる観光客のわさわさした空気は苦手でしたが)。
​​ このとき何冊か買いましたが​『苔とあるく』​を買いそびれたので、必ずいつか、この本を買うために倉敷の蟲文庫を再訪したい。街から古書店がどんどん消えて行く昨今ですが、未来のささやかな楽しみを描ける古書店があることは、古書店好きにとって幸福なことだと思います。
 長々と書いてしまいました。KOBAYASIさん、またまた繋ぎにくいかもしれませんが、どうぞよろしく。​(2020・05・30 K・SODEOKA)​

 追記2024・01・20
 ​100days100bookcoversChallengeの投稿記事を ​​​100days 100bookcovers Challenge備忘録 ​(1日目~10日目)​​ (11日目~20日目) ​​​(21日目~30日目) (31日目~40日目)  という形でまとめ始めました。日付にリンク先を貼りましたのでクリックしていただくと備忘録が開きます。​​​​​​

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最終更新日  2024.01.23 22:05:36
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