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ゴジラ老人シマクマ君の日々

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2020.07.25
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​​ゼーンケ・ボルトマン「お名前はアドルフ?」シネ・リーブル神戸

​​​​​ 朝一番の映画を一本観て、お昼前に町に出てみると行くところが思いつきません。​元町商店街​を東に歩いて、どこかで食事でもと思うのですが、​大丸​を通り過ぎて、とりあえず​朝日会館​にやって来ました。プログラムを見ると、ちょうど30分ほど時間をつぶせばいい映画がありました。​「お名前はアドルフ?」​です。題名から見て​ヒトラー​を茶化して笑っている映画のようです。

「ああ、これでもみるか。」

 というわけで、そこから​サンチカ​に回ってパン屋さんを探しました。お目当ては最近ハマっているフィッシュバーガー風サンドイッチなのですが、入ったお店にはありません。仕方がないので、メロンパンを一つ買い込んで​朝日会館=シネリーブル​に戻りました。
​​​​​​​ 哲学者で大学教授のモジャモジャヒゲの夫​シュテファン​、小学校で教えている妻​ベッチャー​ベッチャーの弟で、投資家の​トーマス​。口髭の男前です。そして幼馴染の音楽家​レネ​という、気の置けない幼なじみの四人が、シュテファンベッチャーの家に集まってディナーというのが映画の始まりです。​​​​​​​
​​​ 出産間近の恋人アンナも参加する予定らしいのですが、まだ到着していないのをいいことに、トーマスが調子に乗って、そのお腹にいる子供の名前を「アドルフ」にすると発表したことで「事件」が勃発します。​​​
​​​​ さすがにドイツ映画ですね、「ナチス」の評価をめぐる議論は徹底しています。「アドルフ」を口にしたトーマスに対するシュテファンの攻撃は執拗を極めます。
 ディナーの前に、もはや絶交宣言かという様相です。
「どうなることやら、興味津々。」
 そんな気分で楽しんでいましたが、おなかの大きなアンナが登場するに及んで、話題はどんどん広がります。「言葉尻」を捉えることで、一人一人がターゲット化されて、全員が「人格否定」されていく展開で、見ているぼくは、一体どういう決着にたどり着くのか、字幕から目が離せません。​​​​
 典型的な会話劇で「ことば」というか、揚げ足取りから本質論まで論理の応酬が迫力満点で、とても演劇的です。舞台の実況中継を見ているようです。
 見終わってチラシを読むと、ここのところドイツあたりで、大当たりをとっている舞台の映画化だということですから、ナショナルシアター・ライヴを見ている感じだったのも当然でした。
 結果的にということですが、登場人物の人格設定もよく練られていました。映画ですから、クローズ・アップで映し出される表情の変化がとてもよくわかって、演劇の面白さが「映画化」される感じでした。
「最後には笑えるオチが待っているはずやな。で、どんなオチやねん?」
 途中からそういう期待で結末を待ち始めました。
「なるほど、そう来ますか!」
 きっと、笑えるという予想は当たりましたが、なかなかシャレた、関節はずし的な「オチ」で締めくくられていて、よくできたウェルメイド・ドラマだと感心しました。
 演劇の舞台では珍しくありません。映画でも見ていそうなものですが、案外、見たことのないタイプのだったで得をした気分でした。こういう発見も楽しいものですね。​​

 監督 ゼーンケ・ボルトマン
 製作 トム・シュピース  マルク・コンラート
 製作総指揮 マーティン・モスコウィック
 原作 アレクサンドル・ド・ラ・パトリエール  マチュー・デラポルト 
 脚本 クラオディオス・プレーギング
 撮影 ヨー・ハイム
 美術 ユッタ・フライヤー
 編集 マルティン・ボルフ
 音楽 ヘルムート・ツァーレット
 キャスト
   クリストフ・マリア・ヘルプスト(シュテファン・ベルガー・ベッチャーの夫)
   カロリーネ・ペータース(エリザベト・ベルガー=ベッチャー)
   ロリアン・ダービト・フィッツ(トーマス・ベッチャー・ベッチャーの弟)
   ユストゥス・フォン・ドーナニー(レネ・ケーニヒ・幼なじみ)
   ヤニナ・ウーゼ(アンナ・トーマスの妻 妊娠中)
   イリス・ベルベン(ドロテア・ベッチャーとトーマスの母)
 2018年・91分・ドイツ  原題「Der Vorname
 20200717シネリーブル神戸no57


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最終更新日  2024.01.08 12:19:18
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