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ゴジラ老人シマクマ君の日々

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2020.08.20
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ナショナル・シアター・ライヴ 2020
​​ステファノ・マッシーニ作「リーマン・トリロジー」神戸アートヴィレッジ 
 新コロちゃん騒ぎでプログラムが変わって、漸く上映になった評判の作品「リーマン・トリロジー」神戸アートヴィレッジセンターで見ました。​
 平日ですが、お盆休暇に入っているのかもしれません、221分の上映時間ですから、ちょっと覚悟がいるのですが、アートヴィレッジにしては客席が埋まっていました。まあ、十数人というところですが。
​ 演出がサム・メンデスという人です。最近、この人が監督した映画を見ました。今年(​2020年)の3月に公開された1917-命をかけた伝令」ですね。お芝居を見るのは初めてです。
 構成、舞台装置、音響、俳優たちの演技、すべて新しいアイデアにあふれていました。見ごたえのある舞台だったと思います。でも、ぼくは少々眠かったのですね
 1840​​​年代、ドイツからユダヤ系の移民としてヘンリーがニュー・ヨークにやって来ます。次いで弟のフィリップ、末っ子の​マイヤー​。​​            ​映画.com
​​​​​​​ 最初にやって来たヘンリー・リーマンサイモン・ラッセル・ビールが演じています。写真の前列左の小男です。二人目のフィリップベン・マイルズが演じていて、後ろの長身です。三人目のマイヤーアダム・ゴドリー。前列の暗い表情の男です。
 アダム・ゴドリーは初めて見るかなと思いますが、残りの二人は知っていました。​​​​​​​

​​​​​サイモン「リチャード2世」をナショナルシアターで見ました。鬼気迫るというか、これぞ役者という演技でした。ベン・マイルズは最近見た「ジョーンの秘密」で息子のニックだった人です。表情を動かすことなく、困惑からいたわりへと変わった心の表現が見事でした。
 それから、この舞台では俳優もなのですが、舞台袖でピアノを弾いているピアニストが印象に残りました。お名前はわからないのですが、ソロのピアノが、効果音というよりも場面の展開や導入にとてもいい役割を演じているのです。​​
 さて、見るからに芸達者な、この三人が、兄弟たち、息子たち、そして孫に至るまで、「リーマン家の人々」150年を演じます。
 なるほど、大したものだと納得させながら、舞台が進行してゆき、「納得」は「驚き」に変わります。
 彼らが演じるのは「リーマン家の人々」だけではありませんでした。この150年、アメリカで生きたすべての人間、あどけない赤ん坊も、夢見る少年も、恋する乙女も、自殺する銀行員も、みんなこの三人で演じて見せるのです。
 衣装を変えるわけでも、小道具で説明するわけでもありません三人は「リーマン・ブラザーズ」として仕事を始めた当時の、フロック・コート姿のままです。

             ​映画.com
 舞台にしつらえられた装置は大きなガラスの箱です。摩天楼のオフィスを彷彿とさせますが、波止場もアラバマの事務所もすべてこの中にありました。三人の俳優はこの箱の中で、生き替わり、死に替わりしてゆく人間になり替わり、「アメリカの夢」を語り続けるのです。
 箱の奥のスクリーンには時代を象徴する様々な映像が光の錯覚のように映し出され、ガラス状の箱の素材に反射します。
 南北戦争、世界恐慌、そして林立するニューヨークのビルディング、映像と抽象的な舞台装置が「場所」と「時間」をイメージさせる演出は、劇場で見てみたいパノラマです。
 箱の中には、多分、段ボールなのでしょう。いくつもの小箱があって、それが「鞄」から「聳え立つビルディング」さえも表現する小道具になっています。その扱いのスムーズさが見事です。
 物語はドイツから渡ってきた、貧しいユダヤ人の三兄弟がアラバマで「綿花」の仲買商をはじめるところから綱渡りがスタートします。
 1840年頃のヨーロッパ、マルクスがエンゲルスと会った頃のドイツからやって来て、新天地アメリカのアラバマ、奴隷制度に支えられた「南部」農業地帯で生産される「商品=綿」を「北部」の工業地帯に売りさばく「交換過程」の中に莫大な利益が潜んでいることを発見したリーマン・ブラザーズが、やがて世界有数の投資信託銀行へと成長するという「アメリカン・ドリーム」の物語でした。

             ​ナショナルシアター公式ページ
​ 夢の綱渡りを支え続ける合言葉はTrust me!(私を信じてください)」でした。三代にわたる「リーマン家の人々」の成功、150年の間信じられ続けてきた「アメリカの夢」、「資本主義の不滅神話」がある日、突然、崩壊し、舞台の幕は降ろされました。​​
​​​ Trust me!という魔法のことばが、魔法を失う日に、「リーマン・ブラザーズ」という会社には「リーマン家の人々」は、ただの一人もいませんでした。Trust me!を「信用」して綱から落ちた人々は、一体何を信じていたのでしょう。​​​
 最後の最後になって、舞台の上には「ガラスの箱」を見あげる大群衆が登場するというアイロニーにみちた終幕でしたが、彼らが何者で、彼らが見ていたのはいったい何だったのか。
 しかし、延々と語り続けられる「叙事詩」にも似たセリフの洪水は、英語のできないぼくのような観客には少々つらい舞台でした。それにしても三人の役者と、軽やかなピアノには感心しました。
 演出 サム・メンデス
 作  ステファノ・マッシーニ
 翻案 ベン・パワー
 キャスト
   アダム・ゴドリー
   サイモン・ラッセル・ビール
   ベン・マイルズ
 2019年・210分・イギリス・ピカデリー劇場
 原題「The Lehman Trilogy」(リーマン三部作)
 20200812神戸アートヴィレッジ


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最終更新日  2020.12.03 20:46:58
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