阿部了・阿部直美「おべんとうの時間 4」(木楽社) いよいよ第4巻までたどり着きました。「おべんとうの時間」です。本当は第3巻のあと、すぐに第4巻を読んだのですが、図書館で借りだしていると、第1巻とか第2巻には予約が重なって、早く返せとうるさいので、先に案内を書いたというわけです
相変わらず、いろんなところに出かける阿部一族ですが、今回の表紙は秋田県潟上市の小玉醸造という会社で、味噌・醤油製造担当のお兄さん、門間裕隆さんの「おべんとう」です。
朝5時に起きて、まず米を研いで炊飯器のスイッチを入れます。それくらいは、まあ自分で。弁当は、母につくってもらいます。
もう「いい人」間違いなしという方ですね。もしも、この案内を読んでくれる人の中に、朝5時に起きて米を研いで炊飯器にのスイッチを入れたことのある方がいらっしゃるなら、是非コメントをいただきたいものです。
ご飯が好きなんですよ。朝はご飯と味噌汁、納豆、牛乳を1本。牛乳は、背が伸びるようにって子供の時からの習慣です。
昼は弁当。夜は、大平山を飲みながら、ご飯と味噌汁をつまみにする感じです。味噌汁は、アザミなんかの山菜の汁や、竹の子汁がいいですね。好きなのは肉かな。嫌いなのは、ミョウガです。
子どものままです。純真無垢、間違いありません。そんな門間さんが仕事についてこういっています。
今日の午前中は味噌の仕込みでした。結構好きなんです。筋トレと思ってやるといいんです。この辺りの筋肉を使っているなと意識すると、楽しめる。逆に、筋トレと思わないとシンドイです。ひたすらスコップで米麹を掬って、コンベヤーに載せる作業なんで、今日は2~3トンですかね。
普段は醤油の火入れを担当することが多いです。熟成したもろみを搾ったものを、85度くらいまで温度を上げます。発酵を止めて、香ばしい香りをつけるためです。火入れの時はいい香りがして、それだけでご飯が食べられますよ。
こういう方が、作っている醸造所の醤油や味噌はおいしいでしょうね。ホント、心からそう思います。
下の、食事の写真を見てもわかると思いませんか。正座ですよ、正座!
「おべんとうの時間」というこのシリーズを1巻から4巻まで読んできました。で、ぼくが、この本のどいうところを気に入っているのか、人様のお弁当を覗いて何がうれしいのか、つらつら考えてみると、一つ気付いたことがあります。
登場人物の方のしゃべりが面白いとか、お仕事が面白いとか、いろいろな地方のローカルな空気を感じるとか、そういうこともあります。
でも、そいうことについて、確かに、このシリーズは俊逸だと思っているのですが、他のいろんな本の中でも、似たような面白さに出会ってきたように思うのです。
で、このシリーズを読みながら、ぼくが生まれて初めてしていることがあることに気付いたのです。
それは、見ず知らずの人の「立ち姿」をしげしげと眺めるということです。ここに写っている人たちはただの生活者ですから、被写体としては素人です。その素人さんたちが、なんとか自然に写ろうと努力している姿が、実に面白いのです。
で、そこに、映し出されているのは何なのでしょうね。
第4巻で、一番印象に残った立ち姿がこの方です。沖縄県の「母子未来センター」という助産施設で助産師をなさっている桑江喜代子さんです。
印象に残った理由ははっきりしています。このポーズは、ぼくにとって母親たちの世代の「はい!ポーズ」だったからです。
もちろん、桑江さんは、母どころかぼくよりもお若い方だと思います。でも、この姿には、「昭和の女たち」が持っていた、ある「かまえ」のようなものがると思いました。多分、それで、「アッ、いいな」って思ったんです。
ここには、分娩台はないんです。あれは医療者にとっては楽な高さですけど、台の上でスポットライトを浴びて息むのは、ちょっと抵抗あるわよね。
うちでは、照明を薄暗くした畳の部屋に布団を敷いて「横向きでも四つん這いでも、好きな格好でいいのよ」って言ううの。「どんな大きな声出したって、全然かまわないのよ」って。
私が子どもの頃はまだ自宅出産でね、弟が生まれる時、階段に座ってじっと待ってたの。産声が聞こえてすごくうれしかった。
ぼくにも、自宅で妹が生まれた時の似た体験があります。こういうお話を聞くと桑江さんの「お仕事」や「世界」に対する「かまえ」がどこから来たのか、ちょっとわかるような気がします。
さて、次は5巻です。未刊ですが、なんだか待ちどおしいですね。ああ、第1巻、第2巻、第3巻の感想はこちらからどうぞ。
それではサヨウナラ。第5巻出版までごきげんよう。
追記2022・05・14
第5巻はまだ出版されていませんが、レイアウトの修繕でお出会いしています。久しぶりにFBに再投稿して、感想をいただいた中に「『生活感たっぷりなリアリィティ―』があるお弁当」という言葉が書かれていて、ハッとしました。
「お弁当」は、子どもだったら学校で、大人たちは仕事先で食べるものだったんですよね。駅弁や行楽用の重箱のお弁当が楽しいのは、それが特別誂えだからです。でも、このシリーズは学校や仕事場で蓋をとったときの楽しさを撮っていて、そこに「生活」という当たり前が写っている安心が、ぼくは好きなのでしょうね。
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