ゴジラ老人シマクマ君の日々
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シマクマ君
シマクマ君のゴジラブログへようこそ。今日は図書館、明日は映画館。あれこれ、踏み迷よった挙句、時々、女子大生と会ったりする。大した罪は犯さない、困った徘徊老人。「週刊読書案内」・「先生になりたい学生さんや若い先生にこんな本どう?」・「映画館でお昼寝」・「アッ、こんなところにこんな…わが街」とまあ、日々の暮らしのあれこれ、いたって平和に報告しています。
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セルゲイ・ロズニツァ「国葬」元町映画館 歴史上の人物にはいろんな人がいて、あの人は好きだとかきらいだとか大河ドラマかなんか見ながらおしゃべりするということがあるわけですが、単なる好みの問題を越えて、「嫌い」な人物が誰にでもいるのではないでしょうか。 ぼくにとって、スターリンという人がそういう人です。そのスターリンの「死と葬儀」を撮ったフィルム群がモスクワの保管庫から発見され、それを見たセルゲイ・ロズニツァ監督によって編集されて、1本の映画として製作された作品が、「国葬」だそうです。先日見てきました。 元町映画館で「群衆」三部作というのでしょうか、上映されていて、まずこの「国葬」を見ました。嫌いな人物の葬儀を見に、なぜ、わざわざ出かけるのかと尋ねられそうですが、そこは、それ、「こいつの最後だけは見届けてやるぞ!」とでもいうのでしょうか、ある人の「お葬式」に対して、普通はとるべき態度ではないのですが、まあ、ミーハー的興味もあったわけです。 映画には、ソビエトロシアの独裁者の葬儀の進行が克明に記録されていました。ソビエト全土にわたって、モスクワはもちろんのこと、ハバロフスクから中央アジアの民衆の姿まで映し出されていました。 どうせ「動員」されているんだろうとたかをくくった気分は一掃されるかのリアリティで「哀しみ」が映し出されてゆきます。 モスクワの地理なんて全く知らないので、そこがどこなのかはわかりませんが、「レーニン廟」の前の広場から、そこに続く大通りを埋め尽くす「群衆」の姿は壮観でした。 最後にレーニン廟の上の演壇に立つ、フルチショフをはじめとする数人の新しい指導者たちは、みんな革命のチンピラたちでした。トロツキーをはじめとする「革命」の大物たちはみんなスターリンに「始末」されてきたわけですが、やがて、壇上の一人が同じ手口で同席している仲間を抹殺するという茶番劇が再演されることになるのは、ソビエト・ロシア史を少しでも齧った人なら知っているわけで、ここまで、映画が映し出してきた「荘厳」がインチキであることは最後に流されるテロップを見るまでもないのですが、それにしても、この映画に映しだされている「群衆」の「哀しみ」の表情はいったい何なのでしょうか。 この映画は、スターリンの悪業を、彼の手によって投獄されたり銃殺されたりした、想像を絶する「人間の数」で告知している最後のテロップをカットすれば、今、現在、スターリンを信じたり支持したりする人が見ても、おそらく何の違和感もない、むしろ、彼らの、ぼくからいえば偶像崇拝を称える映画として見ることができると思います。そして、その崇拝のリアリティを支えるのが、ここに映し出されている大群衆と、彼らの本気の表情なのだとぼくは感じました。 「群衆とは一体何だろう」という問いを残して映画は終わりました。ある種の傑作であると思います。理由は今の所よくわかりませんが、とにかく「ドッと疲れた」映画でした。 監督 セルゲイ・ロズニツァ 2019年・135分・オランダ・リトアニア合作 原題「State Funeral」 配給:サニーフィルム 2021・02・01・元町映画館no74 追記2021・02・14 「群衆」シリーズ「粛清裁判」・「アウステルリッツ」の感想はこちらからどうぞ。 追記2022・09・26 その後、セルゲイ・ロズニツァの「ドンバス」という作品を見ました。ウクライナのドンバス地方を舞台にした、こちらは劇映画でしたが、それは、たとえば、この「国葬」というドキュメンタリーが描いている民衆の「哀しみ」がいかにつくりだされていったインチキであったのかを劇化した作品といってもいいと思いました。 というわけで、ようやく「群衆」というシリーズの真価に気づいた気がしました。 宗教を装ったインチキ教団によるマインド・コントロールが批判されていますが、たとえば「国葬」というような国家行事は国民の群衆化、蒙昧化、民衆に対するマインド・コントロールを狙いとしているインチキ行事だということを再認識したわけですが、目の前では、知る限り最もインチキな政治家であった、元宰相Aの「国葬」とかが、いけしゃあしゃあと実施されるのだそうで、今現在でも、名ばかりの民主主義国家が、いよいよ、全体主義国家へ、インチキ宗教国家へ歩み出すようです。 歴史的愚挙というべき出来事が、今、進行しているわけですが、出るのはため息ばかりですね。
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