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シャノン・マーフィ「ベイビーティース」シネリーブル神戸
映画の冒頭から 「ただならぬ出来事」 が始まります。まず、大きめのグラスの底に、血がついた「奥歯」がゆらゆらと落ちてきて、アップになります。 で、場面が代わって、精神分析なのでしょうか、カウンセリングを受けていたらしい女性と担当医師が、診察室(?)で、とりあえずという感じで「ただならぬ行為に」に及び、行為の途中で電話がかかり、行為を中断して女性は出て行ってしまうのです。 「何ですか、これは?」 と、あ然として見ていると、女性と男性は「ご夫婦」で、二人の間の子供、高校生のミラちゃんが、この映画の主人公だと分かります。 この映画では、随所に「ただならぬ雰囲気」が漂い、一体、何が起こっているのか、あるいは、何が起ころうとしているのかということが、いまひとつわからないまま、最初の「奥歯」のシーンにたどりつき、「ベイビーティース(乳歯)」という題名の謎が解かれ(うーん、解かれたのかな?)、そこまでの「ただならぬ雰囲気」が「なんや大ごとやないか」という結末を迎え、シーンがかわって最後の「海辺」のシーンになります。 映画には、最初から「エピソード」の展開ごとにクレジットがついていました。もっとも、最初の「ご夫婦」のシーンのクレジットは忘れました。ザンネン! で、最後のシーンのクレジットが、たしか「海辺」だったと思うのですが、ひとつ前のシーンで、いったん結末を迎えた物語の回想のシーンでした。 このシーンの最後の最後に、まだ「ベイビーティース」が抜けていなかったミラちゃんがカメラを構え、「仲の良い」ご両親の写真を撮ります。そして。彼女が構えたカメラのレンズ越しに見える海辺の光景が、静かに広がりエンドロールが廻り始めます。 ここまで、実は何が「ただならない」のか、よくわからなかったにもかかわらず、このシーンは素晴らしいと思いました。まあ、このシーンにやられたという感じでした。 JR元町駅から神戸駅までの元町高架下商店街を「モトコ―」と呼ぶのですが、今日は、その「モトコ―」のシャッター街を歩きました。延々と閉まっているシャッターの通路を歩きながら、つくづく、「よその家のことはわからないものだ」と思いました。まあ、家の中のことに限らず、ひと様のことはわからないのですが。 人はそれぞれ「ただならぬ」なにかを抱えて、その上で、家族とか恋人とかになるのでしょうが、「一人娘が死にかけの大病だ」とか、「親から見捨てられた」とか、そういう、人から見てわかることとは違う「ただならぬ」ものが、それぞれの人を支え続けていて、それはお互いにわからないんですよね。 その、お互いにわからないことに耐えて、どう生きていくのか、この映画は、その雰囲気をよく伝えていたと思いました。 死を宣告された高校生ミラちゃんを演じたエリザ・スカンレンという、若い女優さんの表情も印象に残りました。 まあ、それにしても、変な映画でしたね。 監督 シャノン・マーフィ 製作 アレックス・ホワイト 脚本 リタ・カルニェイ 撮影 アンドリュー・コミス 美術 シャーリー・フィリップス 衣装 アメリア・ゲブラー 編集 スティーブ・エバンス 音楽 アマンダ・ブラウン キャスト エリザ・スカンレン(ミラ) トビー・ウォレス(モーゼス) エシー・デイビス(アナ) ベン・メンデルソーン(ヘンリー)ベン・メンデルソーン エミリー・バークレイ ユージーン・ギルフェッダー 2019年・117分・G・オーストラリア 原題「Babyteeth」 2021・03・03シネリーブルno86 追記 ところで、このブログをご覧いただいた皆様で楽天IDをお持ちの方は、まあ、なくても大丈夫かもですが、ページの一番下の、多分、楽天のイイネボタンを押してみてくださいね。ポイントがたまるんだそうです(笑) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024.04.09 21:48:19
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