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カテゴリ:読書案内「近・現代詩歌」
100days100bookcovers no50 (50日目)
奈良少年刑務所詩集 『世界はもっと美しくなる』(編集 寮美千子 ロクリン社) KOBAYASIさんご紹介の小池昌代の「屋上への誘惑」は、未読です。ごめんなさい。彼女のエッセイは、仕事で読んだことがありますが、その新鮮な感覚が印象に残っています。惹かれるものがあったのに忘れていました。これを機会にまた読みたい。近くの図書館には所蔵していないので、お目にかかるのは時間がかかりそうですが。 さあ、次は「屋上」かな?それとも?小池昌代は詩人だけど、私は詩がわからないなあと思いながら職場の図書室の棚を眺めていたら、この本が目に入った。 『世界はもっと美しくなる』奈良少年刑務所詩集 詩・受刑者 編・寮美千子 ロクリン社 去年までやっていたNHKラジオ「すっぴん」という番組中に「源ちゃんのゲンダイ国語」というコーナーがあった。高橋源一郎が毎週金曜日に本を紹介する。(高橋ヨシキの「シネマストリップ」もそのあとで放送されるので、「NHKラジオアプリの聞き逃しサービス」でよく聴いていた。)お相手の藤井アナウンサーも手馴れていて金曜日以外も楽しみだった。勝手に視聴率も悪くないと思っていたのだが、去年の春に終了。今もなお「すっぴん」ロス。どうしてこんな番組を終了させるのかと今もぼやくことしきり。脱線失礼。 このコーナーに編者の寮美千子をスタジオに招いて高橋源一郎といろいろ話をしているのを聞き、心打たれ読みたいと思っていた詩集だった。いまこの詩集を手にしているのも何かに導かれたようだ。 先日来、「ことば」のことを云々してきたが、この詩集の作者の青少年たちのことばには真実があり、力がある。詩の力、言葉の力だと思う。 「帰りたい」 「心の声」 刑務所の監房の扉の内側にはドアノブがありません。自分で扉を開けるということが一切ないからです。「早く出たい」は、受刑者に共通する切実な思いです。でも、出所間近になると、外でうまくやっていけるのかどうか、たいがいの子が、不安に思わずにいられません。 と編者。 「人間」 「刑務所はいいところだ」 育児放棄され、電気も止められた真っ暗に家に一人取り残され、コンビニの廃棄弁当を盗んで食いつないでいた少年。ほとんどの少年が早く外に出たいと言い共感されないが、本人は 「みんなにいろいろ言ってもらえてうれしい。」という。本当に誰からもかまってもらえない人生だったのだろう。 編者が奈良少年刑務所から「受刑者のために授業をしてくれないか」と頼まれて躊躇していたとき、刑務所の先生から言われたのは 彼らはみな、加害者になる前に、被害者であったような子たちなんです。 と。 そして編者は2007年、詩の授業をはじめ、前の言葉のとおりだと思うようになったという。 詩の授業を通して、固く閉ざされた心の扉が開かれたとき、たとえば何も語らない子が苦しかった子ども時代のことをやっと吐露したときに、共感の言葉がかけられ、「やさしさ」があふれ出てくるのを感じたという。編者のほうが「人間は、基本的にいい生き物なのだ」と信じられるようになったとも書いている。 「時流」そんな暮らしをしている子どもたちが、今の日本にいるのだと知り、胸が痛みました。日本にはストリートチルドレンはいない、のではなく、見えにくいだけなのかもしれません。 同じ少年の詩です。 「犬」 「犬に告げる 生ある限り 生きろ そして わたしと 共にあれ」と書くその力を持ち続けていてと願っています。 その後、「奈良少年刑務所」は廃庁されました。明治五大監獄の一つで、築100年を超えていますが、ジャズピアニスト山下洋輔の祖父山下啓次郎設計の名煉瓦建築を保存したいという有志の働きかけで残されることになり、ホテルなどに活用されるらしい。しかし、編者が関わってきた詩の授業はなくなるらしい。少年や若年層の更生教育がどうなるのか、今年のように伝染病があるときはますます滞っているのだろうと想像されます。 simakumaさん 前回 詩集を紹介してくださったのに、だぶってしまい申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします。(E・DEGUTI2020・11・17) 追記2024・03・19 100days100bookcoversChallengeの投稿記事を 100days 100bookcovers Challenge備忘録 (1日目~10日目) (11日目~20日目) (21日目~30日目) (31日目~40日目) (41日目~50日目) (51日目~60日目)) (61日目~70日目)という形でまとめ始めました。日付にリンク先を貼りましたのでクリックしていただくと備忘録が開きます。 追記 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024.03.19 10:18:08
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