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カテゴリ:週刊マンガ便「コミック」
ほしよりこ「逢沢りく(上・下)」(文春文庫)
2021年の1月頃のヤサイクン・マンガ便に入っていました。文春文庫のマンガです。ほしよりこという漫画家を読むのが、まず、初めてですが、エンピツ漫画というのでしょうか、表紙のような絵がエンピツタッチで書いてあって、ノートに横線を引いたとでもいう雰囲気のコマ割りで、まあ、最近では見たことがありません。 なんか昔、「ガロ」あたりで見かけたパターンかなとか思いながら読み始めて、なんとなく引き込まれました。 ほしよりこ「逢沢りく(上・下)」(文春文庫)です これが上巻の最初のページです。ト書きはこう書かれています。 まるで蛇口を 東京の、いや関東地方のというべきでしょうか?中学生「逢沢りくちゃん」の「涙」のお話でした。 全編、このページのような、こんなかんじです。コマ割りとか描線とかに特徴がありますが、主人公は両親二人と暮らす一人っ子という設定の少女です。 父親は女性社員と浮気している、やり手の若い社長さんで、母親は、子育てが終わって、社会復帰を目指している、これまたよくできるらしい主婦です。 で、一人っ子の「逢沢りくちゃん」というわけです。 どうも、マンガの肝は、感情表現をうまく利用する少女ではなくて、「自分はよくわかっている」と思い込んでいる「親」とか「教員」はもちろんですが、その他の登場人物たちにとっても、「涙」という感情記号の、まあ、スタンプ的効果がもたらす「笑い」なのではないかと思いました。 当然ですが、本人も涙のスタンプ効果というか、他者からのステロタイプな理解、というパターンから自由ではありませんから、最後にはこうなるわけです。 ここで、読者は笑うべきなのか、同情すべきなのか、実はよくわかりませんね。 マンガの最後がこういう「オチ」だろうと、なんとなく予想していると、そのマンマの「オチ」ということに66歳のマンガ好きな老人は「疲れる」わけですが、若い読者からは「支持」されているようです。 しかし、この、なりふり構わない最終ページはいったいなんだろうとも思わけです。 「涙」と同じようなパターンで、読者の「笑い」を取っているのかなというのが、「関西弁」で話されて、「関西」イメージを際立たせている会話風景です。 当然ですが、日常の会話風景で、「関西嫌い」の東京人のりくちゃんの嫌悪を際立たせるために描かれていて、日々繰り返すわけですから、内容は結構ディープです。関西人のぼくが読んでも笑える描写がさく裂しています。 でも、どこか「スタンプ」なんですね。ところが、これがウケるのでしょうね。きっとウケていると思いますね。 でも、もう一度、「でも」ですが、作品の最初から最後までが、まあ、マンガというのはそういうもんだという面もありますが、ステロタイプにスタンプ効果という印象なのですね。 そういう意味では、異様に現代的なマンガだと思いました。そこが、たぶん、このマンガのすごいところなのでしょうね。 これって褒めてるのでしょうか。多分、褒めていると思いますよ。(笑) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2021.06.22 21:00:55
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