フランシス・リー「アンモナイトの目覚め」シネリーブル神戸 三度目の「緊急事態宣言」が発令される直前、宣言の結果シネリーブル系列の映画館が休館してしまったので、とりあえず、シネリーブル神戸で見た最後の映画になってしまったのがフランシス・リー「アンモナイトの目覚め」でした。
題名に引き寄せられて観ました。原題は「Ammonite」らしいので、「目覚め」させたのは、この国の配給会社なのでしょうが、どうしても
何に目覚めたのか?
という、いわば、あらかじめに刷り込まれた関心に引きずられて観てしまった映画でした。
もっとも、題名が「アンモナイト」だけだったとして、見たかどうかということもあるわけで、難しいですね。
イギリスの海岸の岸壁と打ち寄せる波の表情が美しく印象的な映画でした。「不遇な女たち」の「愛の目覚めの物語」とでもいうべき体裁で、自然描写と心情の変化が重なり合わせられている、まあ、ありきたりな演出ですが、自然の美しさと主演の二人、ケイト・ウィンスレット(考古学者メアリー・アニング)とシアーシャ・ローナン(ブルジョアの妻シャーロット・マーチソン)による、厚みのある抑制された「愛」の表現、加えて脇役の、特に母親役の存在感が「映画」の「暗さ」を支えていて、見ごたえがありました。
個人的な思い込みですが、イギリス映画は、たぶん、風土とかのせいでしょうね、たとえばこの映画でも、海で水浴びをするシーンなんて「寒くないの?」と声をかけたくなるくらい「暗い」のですが、暗さの中のきらめくような「明るさ」を演じた主役のお二人の演技は印象に残りました。
名前を覚えることが苦手ですが、ケイト・ウィンスレットとシアーシャ・ローナンのお二人は覚えそうです。
もっとも、映画のストーリーに関係なく、興味をひかれたのは映し出された大英博物館のシーンで、まあ、時代的に重なるのかどうかよくわかりませんが、そのあたりに南方熊楠とかいるんじゃないかとか思って興味津々でしたが、映画としては、なかなかなラストシーンが待ち構えていて、「で、どうなるの?」で終わらせたところに、おおいに納得しました。こういう人間関係の描写に、結論はいらないと、ぼくは思うのです。
監督 フランシス・リー
脚本 フランシス・リー
撮影 ステファーヌ・フォンテーヌ
美術 サラ・フィンレイ
衣装 マイケル・オコナー
編集 クリス・ワイアット
音楽 ハウシュカ ダスティン・オハローラン
キャスト
ケイト・ウィンスレット(メアリー・アニング:考古学者)
シアーシャ・ローナン(シャーロット・マーチソン:ブルジョワの妻)
ジェマ・ジョーンズ(モリー・アニング:母親)
ジェームズ・マッカードル(ロデリック・マーチソン:ブルジョア)
アレック・セカレアヌ(ドクター・リーバーソン:医者)
フィオナ・ショウ(エリザベス・フィルポット:隣人)
2020年・117分・R15+・イギリス
原題「Ammonite」
2021・04・19-no39シネリーブル神戸no91