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カテゴリ:週刊マンガ便「コミック」
雲田はるこ「昭和元禄 落語心中(全10巻)」(講談社)
テレビのドラマやアニメも見ないし、週刊漫画誌も買わない、当然、世のはやりすたりにも疎い。頼りは愉快な仲間のヤサイクンが届けてくれる月々の「マンガ便」ですが、「5月のマンガ便」に10巻揃いで入っていて、とっつきは悪かったのですが、5巻を超えたあたりから一気に読んだのがこのマンガです。 雲田はるこ「昭和元禄 落語心中」(講談社) 「ええー、それってもう古いわよ!何を今頃そんな古い漫画を読んで喜んでんの!?」 マア、そういう声が聞こえてきそうですね、連載が始まったのが2010年で、掲載された『ITAN』(イタン)というマンガ雑誌などはもう休刊しているようですが、2014年の講談社漫画賞とか、2017年の手塚治虫文化賞とか、軒並みかっさらって、2014年には、すでにテレビアニメ化され、そのうえ、2017年には、あの、NHKで実写版のテレビドラマにもなっているんだそうですが、シマクマ君は何にも知りませんでした。 「マンガ便」を運んできたヤサイクンによると「第1巻はだるいですが、2020年のベスト3に入るマンガでした。」ということですが、考えてみれば、彼もかなり遅れているのですね。 というわけで、今更、話の筋を追うのもなんですから、マンガの副題になっている「昭和」に絡めて感想をちょっと書いてみたいと思います。 上に貼ったのがその表紙ですが、第1巻~2巻は「与太郎放浪篇」と題されていて、ムショ帰りのチンピラ強次くんが、名人有楽亭八雲のもとに押しかけ入門します。 で、「与太郎」と名付けられ、落語家になるという、いわば、このマンガ全体の「前フリ」ですが、八雲師匠の家に同居している「子夏」ちゃん、世話役の松田さんがまず登場します。 2巻の途中から3巻~5巻と「八雲と助六編」と題して、若かりし日の八雲師匠、芸名は「有楽亭菊比古」といいますが、同門で、子夏ちゃんのお父さんの「助六」、お母さんで芸者だった「みよ吉」の絡みの場です。マア、生きるの死ぬのという世話物風ドラマが展開しています。 3巻の表紙は「有楽亭助六」です。1巻から時間が20年ほどさかのぼった場面です。 4巻の表紙は「みよ吉」です。子夏の母ですが、子夏の父親が「助六」だったのかどうか、そのあたりはどうも「なぞ」だったように思います。気になる方は、マンガで確かめていただきたいと思います。 5巻の表紙は、両親に先立たれた、幼い日の「子夏」とその手を引く若き日の八雲、「有楽亭菊比古」です。この時から「子夏」は八雲の家で養われます。 6巻からは「与太郎再び編」で、表紙は与太郎の高座姿です。ここから、1990年代にはいったような感じですね。 7巻の表紙は、一人目の子供を出産して、与太郎くんと一緒になるころの小夏ちゃんです。お母さんの「みよ吉」さんによく似ています。 8巻の表紙は、右上の老人が松田さんで、おチビさんが小夏ちゃんの長男で「信之助」くん。手前が、落語研究家の「樋口」君で、着物を着ているのが医者で落語家の「萬月」君です。新しい人間関係が始まっています。 9巻の表紙は、夫婦になった与太郎君と小夏ちゃん。真ん中にいるのは信之助君。 これが、第10巻です。第1巻の表紙を飾った有楽亭八雲師匠の20年後の姿です。第1巻から主役としてに登場したのは「与太郎くん」ですが、もう一人の「子夏ちゃん」と二人が似たような年回りで、あの頃、二十歳過ぎです。あの頃というのは、漫才ブーム云々という設定ですから、昭和50年代の後半、西暦でいうと1980年代の半ばを舞台にマンガは始まっていたわけですが、この時、20代の半ばらしい二人は2010年現在には還暦に手が届く年齢ということで、実は、こうやって紹介を書いているシマクマ君と同世代です。このマンガに惹かれた理由がそこにありましたね。 有楽亭八雲と助六、この二人の男の間で揺れ動く芸者みよ吉、それにマネージャーのようなポジションで、すべてを見てきた松田さんというのは、生きていらっしゃれば80代から90代の方ということになります。要するに、シマクマ君にとっても親の世代ということです。このマンガを面白いと配達してくれたヤサイクンは「信之助」や「小雪」の世代です。 「昭和」という物語を世代で語ると、そういう年恰好になるということなのですね。でも、まあ、これだって、昭和20年から後のことですから、大変です。 すべてを見てきた松田さんは第10巻でもご健在で、子夏ちゃんの二人の子供、長男信之介くんは二十歳を過ぎて落語家を目指し、与太郎との間に生まれた長女「小雪」ちゃんも高校生で、めでたい事限りなしの結末でした。 「昭和」と「落語」を掛け合わせたお芝居なのですが、主役のお二人が「同世代」ということだからなのでしょうか、芸道噺としては、まあ、ありきたりといえばありきたりですが、メイン・ストリーである人情噺としては、最後までネタをばらさない工夫には感心しましたね。まさに八雲師匠は、彼だけが知る「秘密」と心中したようです。 マア、それにしても、「この顔で落語家の話の登場人物をやらせるの?」といぶかった人物たちのキャラクターというか、絵柄にも、最後は慣れて楽しみました。拍手! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024.04.28 16:14:34
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