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カテゴリ:映画 ドイツ・ポーランド他の監督
マルクス・H・ローゼンミュラー「キーパー ある兵士の奇跡」パルシネマ
ナチスの空挺部隊の兵士トラウトマンがイギリスの捕虜収容所に収容されて暮らしています。捕虜同士のタバコをかけたシュート合戦から「サッカー映画」が始まります。その賭けの場に登場する天才キーパーがトラウトマンです。映画の題は「キーパー ある兵士の奇跡」でした。 やがて、「鉄十字勲章」で称えられた「ドイツ第三帝国」の英雄が、あのマンチェスター・シティの伝説のゴールキーパーになり、「イギリス」サッカー界の英雄になるという、史実らしいですが、驚くべき話です。 映画は「スポーツ」が作り出す伝説の作品化といっていいのですが、第二次大戦末期から戦後という時代的、社会的背景の中で、ほとんど成就の見通しのない「ドイツ兵捕虜・トラウトマン」と「イギリス女性・マーガレット」の「愛」の物語が、この映画の、もう一つのストーリーです。 マア、いってしまえば、そういうお話なわけですが、これが、なかなか、見ごたえがあったんです。 主人公トラウトマンが、敗戦後、帰国を拒否し、イギリスに残り続ける理由は「サッカー」への情熱と「マーガレット」への愛でした。 敵国イギリスに残り、マーガレットと結婚し、といった二人の関係が、トラウトマンのサッカーでの伝説的プレーと重ねて描かれますが、必ずしも、実生活の上で、トラウトマンとマーガレットが幸せな結末を迎えたわけではなさそうだと描くところが「映画」の「人間ドラマ」・「伝記ドラマ」としてのリアルなのでしょうね。 しかし、ぼくが見ごたえを感じたのは、そういうストーリーではありませんでした。ある、ほんのしばらく映し出された、短いシーンに心を動かされたのでした。 トラウトマンとマーガレットが初めて親しく出会う場面にそのシーンはありました。 「どうして、サッカーが好きなの?」 トラウトマンとマーガレットが、本気で愛し始めるシーンですが、この後、トラウトマンを演じるデビッド・クロスがサッカーボールを魔法のように操って、まあ、リフティングの一種だと思いますが、「ダンス」のよう踊る、そうです、踊るとしか言いようのない、なめらかで美しい、本当に「宙に浮かんでいる」かに見える、夢のようなシーンが映し出されます。それは求愛のシーンですね。 そして、実際の試合シーンで、もう一度、彼がボールを持って踊るシーンが、今度は、トラウトマンがマーガレットの愛を得た喜びの表現として映し出されました。 すばらしいと思いましたね。「スポーツ映画」としても、「恋愛映画」としても、この表現は抜きんでているのではないでしょうか。以前、砂漠の真ん中で、青年兵士が銃をささげて踊る「運命は踊る」という映画にも感動した覚えがありますが、勝るとも劣らないシーンだったと思いました。拍手! 監督 マルクス・H・ローゼンミュラー 製作 ロバート・マルチニャック クリス・カーリング スティーブ・ミルン 脚本 マルクス・H・ローゼンミュラー ニコラス・J・スコフィールド 撮影 ダニエル・ゴットシャルク 衣装 アンケ・ビンクラー 編集 アレクサンダー・バーナー 音楽 ゲルト・バウマン キャスト デビッド・クロス(バート・トラウトマン) フレイア・メーバー(マーガレット・フライアー) ジョン・ヘンショウ(ジャック・フライアー) ハリー・メリング(スマイス軍曹) デイブ・ジョーンズ(ロバーツ) マイケル・ソーチャマイケル・ソーチャ 2018年・119分・G・イギリス・ドイツ合作 原題「The Keeper」 2021・06・01‐no51パルシネマno38 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024.07.29 13:56:02
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