石塚真一「BlueGiantExplorer 3」(小学館)
2021年7月のヤサイクン・マンガ便です。石塚真一「BlueGiantExplorer 3 」(小学館)です。
シアトルからスタートしたアメリカ武者修行の旅を続けている宮本大君、まずは大陸を南下しサンフランシスコにやってきました。
アメリカの町から町へと、慣れない自動車の旅を続けていく「大くん」です。途上で出会う様々な人との間に生まれるエピソードが、映画でいえばロード・ムービーの手法で描かれていくわけですが、出会った人の何十年後かの回想として描くことで、今、目の前で繰り広げられている出来事が、何10年後かの「今」にいたるまでの時間が埋め込まれています。「ロード・ムービー」にビルドゥングス・ロマンを仕込むための石塚真一の工夫ですが、うまいものですね。
今回の出会いは二人です。一人はスケート・ボーダーというのでしょうか、スケボーを抱えて「大くん」の車に、ヒッチハイカーとして乗り込んできた「ジェイソン・フィリップスくん」ですね。第2巻のポートランド編でも登場した人ですが、ここから本格的に登場です。 大くんの練習風景に感動したジェイソンくんですが、実際の演奏を聴くのはこの時が初めてです。この次のページには、ジェイソンくんが大くんの音楽に目覚める感動が描かれてています。
結果的に、音楽に全く素人である彼が、アメリカ人から見ると「内気」なジャズプレイヤー「宮本大」の、サンフランシスコでのエージェント役として活躍しますが、サンフランシスコ以後も、その役割が続くのかどうか、今のところ分かりません。
サンフランシスコでの出会いの、もう一人はチャイナタウンのドラマ―、アレックス・リュウくんでした。
彼はアメリカという人種のるつぼと呼ばれる社会の、特にアジア系の人間に対する固定観念や偏見にいら立つ青年ですが、大くんとの出会いで、何かから解き放たれる「自由」を発見します。
リュウ君が「自由」に目覚め、音楽を発見した瞬間です。石塚真一のマンガの良さがあふれている出会いでした。
さて、サンフランシスコをを出発した大くんとジェイソンくんの二人連れですが、次はどこの町にたどり着くのでしょうね。
ああ、今から新刊が楽しみですが、この第3巻が7月5日発売ですから、まあ、半年後の12月くらいですよね。のんびり待つほかなさそうですね。
追記2022・03・31
第4巻・第5巻の感想書きました。よろしければ覗いてみてください。