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カテゴリ:映画 アメリカの監督
ジム・ジャームッシュ「パターソン」シネ・リーブル神戸 映画.COM
ジム・ジャームッシュ特集、第2弾は「パターソン」です。「ミステリートレイン」と二本立てで見ました。 パターソン市に住むパターソン氏という名の、市内定期バスの運転手の1週間の生活の記録フィルムでした。写真は「パターソン氏」のおうちのブルドッグ「マービン君」です。本名「ネリー」だそうです。恐るべき演技力の持ち主でした。 パターソン氏を演じているのはアダム・ドライバーという俳優さんで、最近よく見かける人でした。友人には好きだという人が多いのですが、ぼくは好きでも嫌いでもありません。顔は憶えやすいと思うのですが、だからといって何かを特徴づけているわけではない印象で、「すごく」がつきそうな行為の主体にはならない気がします。 そういう意味では、今回のバスの運転手で「詩」を書いている人という役柄ははまっていました。こんなことをいうと叱られそうですが、見かけ上、「詩」を書くことが似合わない人が、それも結構ナチュラルな感性表明型の「詩」を書いているという、なんだか正体不明の男にぴったりでした。 で、画面が問いかけてくるのは「詩」って何なんだよ、「日常」って何なんだよっていうことだったりするわけです。 ところで、この映画で顔と演技がおもしろかったのはブルドッグのマービンくんでしたね。ひょっとすると、先の疑問に見事に答えている可能性すらある存在感で、ジャームッシュという人の本領がチラチラ見えてくる気もしましたね。 マービンくんはパターソン氏と、妻のローラの間柄を、どうも嫉妬しているらしいのですが、ひょっとするとパターソン氏の律義な生活や性分そのものに「イラッ!」としているのかもしれません。郵便箱をこっそり壊したり、まだ読みもしていない「詩」について、ローラが持ち上げるたびに唸り声をあげたり、とどのつまりは、パターソン氏の詩の「ノート」をかじり散らしてしまったり。 時間があると、頭の中で推敲しているらしいパターソン氏なのですが、彼の詩作ノートが、ブルドッグのマービンくんにかみ散らされてしまったことが、この映画の最大の事件でした。 思うに、パターソン氏の「詩」は、偶然出会った少女が読んで聞かせてくれた詩と同じように、ピュアでイノセントなものの結晶であって、ローラの愛や、職場のいざこざや、バーで出会う人びとのトラブルの外にある、まあ、もう一人の自分をアイデンティファイするものであって、それは、ローラが次々と生み出すデザインと、おそらく同型ですが、自己拡張型の彼女と違って、頭の中の「ことば」のすることという意味で、より深い孤独の表象だったのではないでしょうか。 マービンくんが、見ているぼくに教えてくれたのはそういうことだったような気がしますね。ノートをなくしたからといって、パターソン氏が「詩の時間」を失うわけではないことをマービン君は知っていたのではないでしょうか。 で、「こういう、何がいいたいのかわからない、何にも起きない映画って、なかなかいいな」って感じていたのですが、滝の前のベンチに座っているパターソン氏のまえに、「ミステリートレイン」ではリーゼントのオニーさんだった永瀬正敏が、黒縁メガネの「日本人の詩人(?)」になってあらわれたのには、まじで、驚きましたね。大阪から来た人だそうです。 ジャームッシュって、やっぱり変な人ですね。見ていて、なんでとかだからどうしてとかいううふうな、なんというか、「ことば」に置き換えて理解しようというか、「解釈」しようという気を失わせるのですよね。で、なんか、笑ってしまうんです。でも、見てる人、あんまり笑わないんですよね。まあ、それも変だと思うのですが、仕方ありませんね。 映画.COM この方ですね。1953年生まれらしいですから、ぼくより一つ年上の方です。 ああ、それから、ローラがいう「あなたはビールの香りがする」という言い回しですが、飲んだ後の匂いって、アルコール臭いだけなんじゃないですかね。「ビール」独特の匂いってあるんですかね。映画の中で、繰り返されることもあって、「ふーん!?」という気分で気になりましたね。しかし、ジャームッシュって、そこのところをかぎ分けたい人なのかもしれませんね。 まあ、今回はブルドッグのマービン君に拍手!でした。 監督 ジム・ジャームッシュ 脚本 ジム・ジャームッシュ 撮影 フレデリック・エルムス 美術 マーク・フリードバーグ 衣装 キャサリン・ジョージ 編集 アフォンソ・ゴンサウベス 音楽 スクワール キャスト アダム・ドライバー(パターソン) ゴルシフテ・ファラハニ(ローラ) バリー・シャバカ・ヘンリー(ドク) クリフ・スミス(メソッド・マン) チャステン・ハーモン(マリー) ウィリアム・ジャクソン・ハーパー(エヴェレット) 永瀬正敏(日本人の詩人) 2016年・118分・G・アメリカ 原題「Paterson」 2021・08・07‐no70シネ・リーブル神戸no107 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023.11.07 20:29:16
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