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カテゴリ:映画 アメリカの監督
ジム・ジャームッシュ「オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ」シネ・リーブル神戸 ジャームッシュ特集第3弾は「吸血鬼」のカップルのお話でした。なんか、どこかで見たことがあるなという感じの、印象的な「美人」女優ティルダ・スウィントン演じるイヴと、まあ、「わがままで才能のある男前」がぴったりという雰囲気のトム・ヒドルストンのアダムというカップルの苦悩(笑)の物語でした。
ぼくにとって、吸血鬼といえば15世紀、ルーマニア、ワラキアのドラキュラ伯爵という、まあ、定番というか、いい加減なイメージで、エキゾチックなんですね。 このお二人も、どうも、その伯爵の同族というか、末裔というか、アダム君なんて「シューベルトに曲を書いてやった」とかのたもうていらっしゃいましたから、「あんたら幾つやねん」とお伺いしたくなる年齢のようなのですが、そこは吸血鬼ですから年なんかとらないようです。 とは言いながら、若いころのようにそこいらの善男善女の首筋にむしゃぶりつくわけにはいかないらしく、輸血用の血かなんかをこっそり手に入れて「RHマイナスO型は、やっぱりいいね」とか何とかいいながら(そんなセリフはありませんが)ワイングラスで啜ったりなさっていて、笑えます。 なんか、昔、極東の島国でも、岸田森という、まあ、今となっては懐かしい男前がやってたこともあったような記憶がボンヤリあります。あんまり「東洋の田舎」にはなじまなかった気もしますが、なんといっても、ジャームッシュという監督のこの映画にただようセンスには遠く及ばなかったような気がしますね。 たとえば、ミュージシャンのアダムが暮らしているのはアメリカのデトロイトですが、イヴが暮らしているのはタンジールというのですから、モロッコですね。地中海のアフリカ側です。そこからイヴは飛行機で飛んできて何十年ぶりかで愛し合ったりするわけです。 世界の果てで、散り散りに生きのびている吸血鬼が、夜間に、飛行機で、大西洋を飛び越えて、何十年ぶりだかに、やってきては愛し合うのです。もうそれだけで笑えるようなものですが、その結果、二人がヌードで抱き合って寝ているシーンなんかがモノクロのストップモーションで映し出されて、なんというか、映画でしか映せないというか、現実離れしていているというか、とても笑ってなんていられない美しさに息をのんだりさせるのです。監督のセンスがキラキラしていますね。 まあ、そこからは、イヴの妹らしいのですが、エヴァなんて言う跳ね返り吸血鬼娘というか、トリック・スターというか、が登場して、生きづらい「現代」を、素性を隠しながら生きる吸血鬼カップルの美しくも哀しい「愛のくらし」はぶち壊され、その結果、今度は二人してモロッコまで逃れていくの羽目に陥るというドタバタ展開が待っています。この辺りにも、見どころ満載なのですが、頼りにするはずだった吸血鬼作家マーロウ師も老衰には勝てず亡くなってしまい、取り残された二人が、すっかり行き暮れて、空腹にあえいでるところに、夜の浜辺で愛を語る人間(まあ、彼らはゾンビと読んでいるのですが)のカップルがあらわれるというラストシーンでした。 まあ、そこで起こることは、吸血鬼の行為としては、当然といえば当然の結末なのですが、笑えました。 なんというか、お話全部が常軌を逸しているのですが、そこがいいのです。現実の人間の世界に向きあいながら、少しずれている。吸血鬼の話なのにファンタジーでもホラーでもなくて「リアル」に迫ってくるものが確かにあって、それが、フワッと浮き上がっている感じですね。「面白い」といって騒ぎ立てたり、誰かにすすめる気にもなりません。でも、ぼくは、これ好きです。そんな感じ。 監督 ジム・ジャームッシュ 脚本 ジム・ジャームッシュ 撮影 ヨリック・ル・ソー 美術 マルコ・ビットナー・ロッサー 衣装 ビナ・ダイヘレル 編集 アフォンソ・ゴンサウベス 音楽 ジョゼフ・バン・ビセム キャスト ティルダ・スウィントン(イヴ) トム・ヒドルストン(アダム) ミア・ワシコウスカ(エヴァ:イヴの妹) ジョン・ハート(マーロウ・作家・二人の師) アントン・イェルチン(アダムのエージェント) ジェフリー・ライト(輸血用血液密売医師) スリマヌ・ダジ 2013年・123分・G・アメリカ・イギリス・ドイツ合作 原題「Only Lovers Left Alive」 2021・08・09‐no72シネ・リーブル神戸no108 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024.05.08 21:26:36
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