|
カテゴリ:映画 アメリカの監督
マイテ・アルベルディ「83歳のやさしいスパイ」シネ・リーブル神戸 見たのはマイテ・アルベルディという、多分、アメリカ(?)の監督の「83歳のやさしいスパイ」でした。
「アンナ、出てきてる人らな、ホンモノや思うねんな。もうな、ちょっとボケてはる様子とかもやけど、顔の表情とか皺とか、なんというか立ち居振る舞いが演技チャウで、あれは!ほんでな、スパイ役のジーさんが、その皺くちゃやったり、『ちょっと太めデンナ』のオバーチャンらの人気モンになんねん。それが、なんか、リアルやねん。作りごととは思われへんで。」 まあ、とか、何とかを帰宅して早速、チッチキ夫人相手にまくしたてた映画でした。 どうしてそう思い込んだのかわかりませんが、予告編から本編を見終わっても、まだドラマ、劇映画だと思い込んでいて、帰宅してチラシとかネットのレビューとかを読みながら、ようやくドキュメンタリィー作品だったことに気づきました。 確かに、「探偵」役のセルヒオさんが老人施設に入所する時の面接の場かどこかで、撮影しているスタッフとかカメラが映し出されるシーンはありましたが、展開の「面白さ」に気をとられていたのでしょうね、 「まあ、そういう手法もあるよな」 とか思って、ドラマとして何の不自然も感じませんでした。 それにしても、見ながら、一番圧倒されたことが、登場する老人たちの、とても役者の演技とは思えない 「リアル」な様子! だったわけですから、気づきそうなものですが、疑いもしませんでした。 で、一番 「スゴイ!」と思ったのは、この探偵さん相手にオバーチャンたちが実によくしゃべらはって、なんか、とても素直に心を許していらっしゃったことでした。 考えてみれば当たり前のことですよね、オバーチャンたちからすると、同じ年恰好で、同じ境遇の、それも男性(これもかなり重要なポイント?)が、ベッドの枕元まで来て話を聞いてくれて、なんかおしゃべりすると返事してくれる。何せ、探偵なのですから、決して無視しない。 彼女たちが毎日出会っている若い看護や介護の人は、こんな悠長な態度で、彼女たちの相手はできないでしょうし、たとえ出来たとしても、まあ、言ってしまえば「上から目線」のやさしさになりがちでしょうからね。 この作品は、セルヒオさんという80歳を超えていて、 「ところで、あなたは大丈夫なの?」 と尋ねたいような人が、シーン、シーンでそれぞれの人の隣にすわって話を聞いていたり、心配げにベッドをのぞき込んで話しかける姿を一緒に撮ることで、カメラが持ってしまいがちな「上から目線」というか、テレビなんかで見かける「潜入ルポ」的な興味本位の感覚とは少し違う、自由な映像をつくりだしていると思いました。 セルヒオさんが出会う度に 「自分がいろんなことを、すぐに忘れていっている.」 といって悔やむ女性がいます。数日後、セルヒオさんは、エージェント力を発揮して取り寄せた家族の写真を彼女に見せて、 「我慢しないで、泣いてもいいんですよ。」とか、なんとか、話しかけるのですが、そのセルヒオさんの前で、彼女が声を上げて泣きはじめるシーンがありました。とても他人事とは思えない印象を持ちましたが、そう感じさせたのは、ぼく自身の年齢のせいだけではなく、映画の作り方の工夫に理由の一つがあったと思うのです。 大活躍で人気者の老探偵でしたが、 「やっぱり、もう、家族のところに帰りたい!」 と訴えて、仕事を終え、施設を去っていくシーンで映画は終わりました。 彼だけは役柄を演じていたわけですが、演じながら彼は哀しかったのでしょうね。老探偵の人柄が胸を打つラストでした。いやはや、ご苦労様でした。拍手! 監督 マイテ・アルベルディ 脚本 マイテ・アルベルディ 撮影 パブロ・バルデス 編集 キャロライナ・シラキアン 音楽 ビンセント・ファン・バーメルダム キャスト セルヒオ・チャミー(探偵) ロムロ・エイトケン 2020年・89分・G・チリ・アメリカ・ドイツ・オランダ・スペイン合作 原題「El agente topo」「The mole agent」(「潜入スパイ」) 2021・08・12‐no74シネ・リーブル神戸no109 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024.06.24 11:58:01
コメント(0) | コメントを書く
[映画 アメリカの監督] カテゴリの最新記事
|