堀貴秀「JUNK HEAD」神戸アートヴィレッジ
「1時間40分の長編アニメーション映画を、たった一人で、7年の歳月をかけて作ったらしいんだけど、海ん向こうで評判になって、逆輸入されて、それが、また評判らしい。」
そんな風の便りが世間知らずな徘徊老人の、かなり疎い耳にも聞こえてきました。海外で評判になって逆輸入というところに、老人の旧式なアンテナが反応しました。
作品は、堀貴秀「JUNK HEAD」です。神戸アート・ヴィレッジで見ました。ストップモーション・アニメというらしいですが、膨大な手間暇がかかる方法で作られたらしいですね。やはり、評判なのですね、アート・ヴィレッジとは思えないお客さんで、時節柄ちょっとビビりましたが、無事見終えました。
チラシの「伝説のカルトムービー」という言い方に、ちょっと、首をかしげましたが、映画には熱中しました。
実感としては「こういう世界を作り上げて、描く人がいるのだ!」という、まあ、「驚き」がすべてだったといっていいかもしれませんでした。
「驚き」ながら、興味を引いた映像の特徴のひとつは、底流しているイメージの、これは「幼児性」といえばいいのでしょうか。突如、道端で行われる排泄シーン、天井に潜んで襲い掛かってくる怪物の恐ろしさの形、「ごちそう」と評判のキノコの形、どれも、これも、かなり直接的な「子ども」の幼い「性」の世界を強くイメージさせる形象だと思いました。なによりも「人間系」のキャラクターたちの「イノセント」ぶりは「子ども」そのものといっていいのではないでしょうか。
もう一つの「驚き」は見終わっても、なんだか何も残らない「無思想」ですね。まあ、そんなふうに映画を観てしまうからそう思うのでしょうが、いわゆる「表現」を支えている「主張」が何も感じられないことでした。「アナーキー」でも「ニヒル(虚無)」でもない、まあ、あるとすれば、ある世界を構築して見せるオタク的「情熱」ですね。
海外からの逆輸入、幼児性、無思想、こうして並べてみると、なんか、とても「現代的」だと感じるのですが、いかがでしょうか。
続編が、計画・準備されているということらしいです。ええ、もちろん見ますよ!
この、意味不明の存在感がどこに向かうのか、やはり、気になりますからねえ。
久しぶりのアート・ヴィレッジの正面のガラス窓(?)には、子供たちの「お絵描き」が溢れていました。まあ、2021年8月14日で、雨でした。そういえば、それ以来、ずっと雨が降っていますね。
監督・原案・キャラクターデザイン・編集・撮影・照明・音楽 堀貴秀
音楽 近藤芳樹
制作 やみけん
2017年・99分・G・日本
2021・08・14‐no76神戸アートヴィレッジ(no16)