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ゴジラ老人シマクマ君の日々

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2021.08.26
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​​ジム・ジャームッシュ「ナイト・オン・ザ・プラネット」シネ・リーブル神戸​​
​ ​シネ・リーブル​​ジャームッシュ特集​です。​6本目​に見たのが​「ナイト・オン・ザ・プラネット」​でした。もともとの題名は​​「Night on Earth」です。ボクはアースの方がいいかなと思いました。​​
 今回の特集で、最後に見た映画ですが、結果的振り返ってみると​「トリを取る」​にふさわしい傑作でした。出てくる役者さんを知っているわけでもないし、とりわけ声高な主張があるわけでもありません。さしたる事件も起こらないし、ドキドキするサスペンスやラブストーリーがあるわけでもありません。​

にもかかわらず、​​
「まあ、よくぞここまで、好みのド真ん中にボールが来るものだ!」
​ ​と感嘆しました。
 ​ロサンゼルス、NY、パリ、ローマ、ヘルシンキ​の5つの都市を舞台に、タクシーの車内で展開される、運転手と客との巡り合いを​オムニバス形式​で描いています。地球という同じ星の同じ夜空のもと、それぞれ違ったストーリーが繰り広げられていくという構成です。ただ、それだけのことです。
 突如、話は変わりますが、​谷川俊太郎​の詩に​「朝のリレー」​という、CMで有名になった作品があります。書きあぐねている感想の代わりに、ちょっと、この映画をあの詩でモジってみようと思います。まあ、笑っていただければ嬉しいのですが。
「夜のリレー」
ロサンゼルスの少女が
修理工の夢を見ているとき、
ニューヨークの移民の老人は
ピエロだった思い出に遊んでいる
パリのやさ男が
盲目の女と連れ添っているとき、
イタリア女たらしが
神父の死に立ち会い、
ヘルシンキの運転手は
飲んだくれに手を焼いている
この地球で
いつもどこかで夜が闇に沈んでいる

ぼくらは闇をリレーするのだ

経度から経度へと
そうしていわば交換で地球を守る
眠りの最中、ふと耳をすますと
どこか遠くでタクシーの警笛が鳴ってる
それはあなたが眠りこけている闇を
誰かがしっかりと受けとめている証拠なのだ
夜はやがて明けようとしている
​​​ こんなふうに遊ぶのは​ジャームッシュ​にも​谷川俊太郎​にも失礼かとは思うのですが、でも、まあ、二人の間につながるものを感じるのです。それは、うまくは言えませんが、人間という「宇宙人」に対する​「愛」​のようなものですね。​​
​ 映画は​ジャームッシュ​​詩的な感性​がのびのびと炸裂していて、世界を独特の感覚(やさしさ(?))でつつんで見せた傑作だと思いました。拍手!​​
監督 ジム・ジャームッシュ
製作 ジム・ジャームッシュ
製作総指揮 ジム・スターク
脚本 ジム・ジャームッシュ
撮影 フレデリック・エルムス
編集 ジェイ・ラビノウィッツ
音楽 トム・ウェイツ
キャスト
ロサンゼルス編
ウィノナ・ライダー(コ―キー運転手)
ジーナ・ローランズ(ヴィクトリア・スネリング客)
ニューヨーク編
ジャンカルロ・エスポジート(ヨー・ヨー客)
アーミン・ミューラー=スタール(ヘルムート・グロッケンバーガー運転手)
ロージー・ペレス(アンジェラ客の義妹)
パリ編
イザック・ド・バンコレ(運転手)
ベアトリス・ダル(盲目の女性)
ローマ編
ロベルト・ベニーニ(ジーノ:運転手)
パオロ・ボナチェリ(神父)
ヘルシンキ編
マッティ・ペロンパー(ミカ)
カリ・バーナネン(客)
サカリ・クオスマネン(客)
トミ・サルメラ(アキ)
1991年・128分・アメリカ・日本公開1992年
原題「Night on Earth」
シネ・リーブル神戸no112
追記2021・08・26

谷川俊太郎「朝のリレー」はこんな詩です。
「朝のリレー」
 カムチャッカの若者が
 きりんの夢を見ているとき
 メキシコの娘は
 朝もやの中でバスを待っている
 ニューヨークの少女が
 ほほえみながら寝がえりをうつとき
 ローマの少年は
 柱頭を染める朝陽にウインクする
 この地球で
 いつもどこかで朝がはじまっている

 ぼくらは朝をリレーするのだ
 経度から経度へと
 そうしていわば交換で地球を守る
 眠る前のひととき耳をすますと
 どこか遠くで目覚時計のベルが鳴ってる
 それはあなたの送った朝を
 誰かがしっかりと受けとめた証拠なのだ
​(谷川俊太郎「谷川俊太郎詩集 続」思潮社)​
​ ​もちろん、​谷川俊太郎​の詩の良さについては言うまでもありません。お叱りを受けるのを覚悟して「戯画」化しましたが、原詩の価値を貶める意図は毛頭ないことを言い添えておきます。​

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最終更新日  2023.11.07 22:42:49
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