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トマス・ビンターベア「アナザーラウンド」シネ・リーブル神戸 デンマークの高校の先生が「お酒で元気になる」という、なんというか、訳の分からないモチベーション活性法を試すという映画でした。デンマーク映画で原題の「Druk」も英題の「アナザーラウンド」という題も「もう一杯いかが」とかいう意味だそうですが、「まあ、やめておいた方がいいんじゃないですか」という気分で見終えました。
40代に差し掛かって、仕事の(いや、プライベートも?)元気を失った、まあ、生徒に(家族にも?)さじを投げられた高校の先生という設定が、何ともリアルで、身につまされる作品でした。 が、活性法として出てくるのが「お酒」というところに、ちょっとついていけないものを感じましたが、飲酒に対する文化ギャップなのでしょうかね。 そういうわけで、主人公で歴史の先生であるマーティン(マッツ・ミケルセン)をはじめとする、さえない中年男4人が血中アルコール濃度を測りながら、どう考えても危ない実験に挑むわけで、見ている、元教員の老人はハラハラすること限りなしでした。 もっとも、映画はコメディ仕立てとはいうものの、いわゆる「危機」に遭遇する「人生の時」を、結構、シリアスに描いていて、まあ、今となっては過去のことなのですが「40代ってそうだったかなあ。」などと、さほどの自覚もなく振り返りながらも、笑うに笑えない映画でした。 誰でもがそうなのか、そこはわかりませんが、この映画に登場するさえない中年教員の時代を、それはいってしまえば年齢とともに失われていく何かに気づく時代だったと思うのですが、それをどうやってやり過ごしたのか、そこから20数年の日々を、どんなモチベーションで過ごしてきたのか、そんなことを考えさせられる作品でした。 最後に、去っていった妻アニカ(マリア・ボネビー)からの復活メールで救われたマーティンの美しいダンス姿で幕を閉じたのですが、酔ったまま海に出て帰ってこなかった、体育の先生だったトミー(トマス・ボー・ラーセン)の方にこそリアルを感じたのは、見ているぼくの年齢のせいでしょうか。 この作品で面白かったのは、デンマークの高校の教室や教員室の様子、テストのやり方でした。どう見ても、日本の学校よりもまともでしたね。とても羨ましく思いました。 さて、映画トータルについてです。どこかにコメディとあったのですが、案外、生真面目に作られている印象の映画でまじめに見ました(笑)。ただ、ギョッとするというか、ハテナ?というか、なんでもいいのですが、ドキッ!というインパクトがもう少しあればなあという作品でした。ちょっと残念でしたね。 監督 トマス・ビンターベア 脚本 トマス・ビンターベア トビアス・リンホルム 撮影 シュトゥルラ・ブラント・グロブレン 美術 サビーネ・ビズ 衣装 エレン・レンス マノン・ラスムッセン キャスト マッツ・ミケルセン(マーティン) トマス・ボー・ラーセン(トミー) マグナス・ミラン(ニコライ) ラース・ランゼ(ピーター) マリア・ボネビー(アニカ) ヘリーヌ・ラインゴー・ノイマン スーセ・ウォルド 2020年・115分・PG12・デンマーク 原題「Druk」 2021・09・13‐no85シネ・リーブル神戸no116 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024.07.17 21:36:18
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