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ゴジラ老人シマクマ君の日々

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2021.09.19
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​​ジム・ジャームッシュ「デッドマン」シネ・リーブル神戸​​​  懐かしの​ニール・ヤング​の音楽が響いていて、若き日のジョニー・デップが汽車に乗っています。映画館に飾ってあって上の写真ですが、「ひょっとして!?」とは思うのですが、この青年が、我が家で人気の、あのジョニー・デップだということに確信が持てません。​
 彼が演じているのは、クリーブランド、(ああ、またクリーブランド!)から仕事を求めて「西部」にやって来た会計士です。
「会計士!?」
​ で、名前がウィリアム・ブレイク。​
「ウィリアム・ブレイク!?」
 その「会計士」ウィリアム・ブレイクが、なぜそうなるのか、そうなったのか、よくわからないまま「おたずね者」になってしまい、「おたずね者」ウィリアム・ブレイクの逃避行が始まって、その前に現れるのが、「いかにもそれらしい」ともいえるし、「なんだこいつは」ともいえるネイティブ・アメリカン、名前はノーボディ。そうして、彼が崇拝するのが、イギリスの詩人ウィリアム・ブレイク!
​​ここで、もう一度「ノーボディ!?」、「ウィリアム・ブレイク!?」 ノーボディウィリアム・ブレイクの写真です。これを見直しても、やっぱり思うのです。ノーボディって誰で、ウィリアム・ブレイク崇拝するってなんやねん?です。
​​
​ そういうわけで、テンポがまるで違う西部劇でした。確かにピストルもぶっ放すし、馬にも乗ります。焚火して野宿もするし、おたずね者も出てきます。保安官も賞金稼ぎもやってきます。
 「ウーンどうなんねん?!」
 で、最後にはノーボディが、瀕死のウイリアム・ブレイクをカヌーにのせて「やすらぎの地?」へ送り出します。ウィリアム・ブレイクは、もう、かなり前から「デッドマン」だったような気もしますが、​
​わかりません。
 映画そのものには、わからないのに納得させる力があって、それってなんやろうという気持ちが残ります。
 ​ジャームッシュ​が何を描こうとしていたのか、ボンヤリしていて、焦点が定まりません。​
あの感じかなって、思い出したのが藤井貞和という詩人の詩です。だって、「雪 nobody」って題なんです。こんな詩です。​
 
 雪 nobody      藤井貞和

  さて、ここで視点を変えて、哲学の、
  いわゆる「存在」論における、
  「存在」と対立する「無」という、
  ことばをめぐって考えてみよう。
  始めに例をあげよう。アメリカにいた、
  友人の話であるが、アメリカ在任中、
  アメリカの小学校に通わせていた日本人の子が、
  学校から帰って、友だちを探しに、
  出かけて行った。しばらくして、友だちが、
  見つからなかったらしく帰ってきて、
  母親に「nobodyがいたよ」と、
  報告した、というのである。

 ここまで読んで、眼を挙げたとき、きみの乗る池袋線は、
 練馬を過ぎ、富士見台を過ぎ、
 降る雪のなか、難渋していた。
 この大雪になろうとしている東京が見え、
 しばらくきみは「nobody」を想った。
 白い雪がつくる広場、
 東京はいま、すべてが白い広場になろうとしていた。
 きみは出てゆく、友だちをさがしに。
 雪投げをしよう、ゆきだるまつくろうよ。
 でも、この広場でnobodyに出会うのだとしたら、
 帰ってくることができるかい。
 正確にきみの家へ、
 たどりつくことができるかい。
 しかし、白い雪を見ていると、
 帰らなくてもいいような気もまたして、
 nobodyに出会うことがあったら、
 どこへ帰ろうか。
 (深く考える必要のないことだろうか。)」
 詩を読み直して、でたらめなことを考えました。映画の​​ウィリアム・ブレイク​ですが、彼はアメリカの西部の荒野で​Nobody​と出会って、しようがないからピストルを撃ったり、馬に乗ったり、海の向こうに何があるのか知らないけれど、最後は、カヌーに乗せられて海に出て行っってしまいます。ウィリアム・ブレイク​である彼は、たぶん、最初から​Dead Man​だったし、友だちは​Nobody​だけだったんです。​​​
​​​ で、結局、帰る家もないし、帰る道もわからなかったし、だから、彼が​Nobody​と出会ったことは​ジャームッシュ​が映画に撮るしかなかったのでしょうね。​映画には​アメリカ​が見えていたような気はするのですが、そこが、本当はどこなのかわかりませんでした。
 さみしくて、不可解で、温かい映画でした。だって、友だちの​Nobody​だけは、ずっといてくれたし、見送ってくれたのですから。そう、
Nobody​が、ずっと横にいてくれたんです。なんだか、そのアイロニーがすごい。やっぱりこの映画はジャームッシュ拍手!でした。
 まあ、それにしても、何が言いたいのかわからない感想で申し訳ありません。要するに、わからなかったってことでしょうね。この監督の作品には、「浸る」しかない感じですね。まあ、それが実にいい気持ちなんですが。​​​​​

監督 ジム・ジャームッシュ
製作 ディミートラ・J・マクブライド
脚本 ジム・ジャームッシュ
撮影 ロビー・ミュラー
美術 ボブ・ジンビッキ
編集 ジェイ・ラビノウィッツ
音楽 ニール・ヤング
キャスト
ジョニー・デップ(ウィリアム・ブレイク・会計士)
ゲイリー・ファーマー(ノーボディ・ネイティブ・インディアン)
ランス・ヘンリクセン(殺し屋)
マイケル・ウィンコット(殺し屋)
ユージン・バード(殺し屋)
ミリー・アビタル(セル・ラッセル花売り娘)
クリスピン・グローバー
イギー・ポップ
ビリー・ボブ・ソーントン
ジャレッド・ハリス
ガブリエル・バーン
ジョン・ハート
アルフレッド・モリーナ
ロバート・ミッチャム
1995年・121分・PG12・アメリカ
原題「Dead Man」
2021・08・13‐no75シネ・リーブル神戸no118

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最終更新日  2024.01.05 20:36:50
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