ルネ・クレール「自由を我等に」シネ・リーブル神戸 新年あけましておめでとうございます。
2022年のお正月、1月2日、新年初感想文です。とかなんとかいいながら、去年、2021年の11月見た映画で「なんのこっちゃ」なのですが、映画は名匠ルネ・クレール監督の「自由を我等に」です。ルネ・クレール・レトロスペクティブの1本ですが、題名が、新年にふさわしいと思いませんか。今年こそ、自由を我等に!そういう気持ちです。
さて、映画ですが、1931年のモノクロ作品ですが、現代映画の出発点に輝く傑作だと思いました。映画を見ながら「あれ、この感じどこで・・・」という記憶のようなものが浮かんできて、二十代から今日まで見て来た様々な映画に、この作品の片りんというか雰囲気というか影響というかを感じる作品でした。
刑務所で、あろうことか囚人たちが「自由を我等に」と歌っています。まず、このシーンに脱帽でした。喜劇というのはこうでなくちゃいけませんね。
男前のチビ、エミール(アンリ・マルシャン)と、どこか怪しげで、妙な愛嬌というか、いくら真面目な顔をしても笑えるという雰囲気のルイ(レイモン・コルディ)の二人組の活躍です。そう凸凹二人組です。
その次が脱獄のドタバタです。このシーンにも70年代頃のテレビ・コントからからドリフのケンちゃん・カトチャンのコントまで、あるあるで思い出せるギャグが詰まっていました。で、その結果、ルイだけ牢屋から逃げのびて、なぜか、走ってもいない自転車レースのチャンピオンになってしまうに始まって、あっという間に電蓄、日本でいえばナショナルの松下さんですね、の社長さんになるという、テンポのいいご都合主義も最高です。
その間、牢屋暮らしのエミールがやっとのこと出獄して出会うのは大金持ちになったルイですが、働き始めたルイの工場のベルト・コンベアシーンなんて「ああ、チャップリンや」と誰でも気づくであろうモダン・タイムスぶりで、今となっては二重の意味で笑えます。なにしろこちらがチャップリンより古いのですからね。
実は、ラブ・ロマンス風のドタバタもちゃんとあるのですが、端折りますね。で、とどのつまりはというと、すべて御和算で、おかしな二人組が「自由を我等に」とばかりに、歌を歌いながらトンズラをかますという最高のエンディングでした。
喜劇映画の鉄則でしょうね、明るくてテンポがいいうえに、音楽が楽しいんです。まあ、ぼくごときが言うまでもないのでしょうが素晴らしいと思いました。さすがのルネ・クレールに拍手!でしたね。
ああ、それと、なんだかしみじみとおかしいルイ役のレイモン・コルディにも拍手!です。ぼくはこのタイプが大好きです。ちなみに、もう一人のエミール(アンリ・マルシャン)はチッチキ夫人が気に入ったようですね。「男前やん!」とか言ってました、ということでついでに拍手!です。
監督 ルネ・クレール
脚本 ルネ・クレール
撮影 ジョルジュ・ペリナール
美術 ラザール・メールソン
音楽 ジョルジュ・オーリック
キャスト
アンリ・マルシャン(エミール:脱獄失敗の男)
レイモン・コルディ(ルイ:脱獄成功の男)
ローラ・フランス(ジャンヌ:エミールが一目ぼれの女性)
ポール・オリビエ(ジャンヌの伯父)
1931年・84分・G・フランス
原題「A Nous la Liberte」
2021・11・17‐no111・シネ・リーブル神戸no130