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カテゴリ:映画 ソビエト・ロシアの監督
バフティヤル・フドイナザーロフ「少年、機関車に乗る」元町映画館
映画.com 少年たちの映画が好きです。列車に乗って出かける話も好きです。原題の「Bratan」は「弟」なのか「兄弟」なのか、そのあたりはよくわかりませんが男の子二人の兄弟の話でした。 題名は「少年、機関車に乗る」、監督はバフティヤル・フドイナザーロフという人で、「海を待ちながら」を残して2015年、50歳で早世した方だそうですがが、彼が26歳のときに撮った処女作だそうです。 「中央アジア今昔映画祭」のなかの1本で、「海を待ちながら」と同じ日に2本立てで見ました。ソビエト映画とかロシア映画に詳しい知り合いの方に薦められた作品でしたが好きなタイプの映画でした。 高校生くらいの男の子たちが、なんとなくな雰囲気でウロウロしていて、中の一人が主人公のようです。何か荷物が入っている袋を塀の向こうに投げ入れようとしているようなのですが、失敗して逃げ出します。そんなふうに映画は始まりました。 少年の名はファルー(フィルス・サブザリエフ)で、お母さんさんが亡くなった後、小学生低学年の弟のアザマット(チムール・トゥルスーノフ)の面倒を見ながら、おばあちゃんの家で暮らしています。ファルー君はアザマットのことを「でぶちん」と呼んでいます。ファルー君の仕事は刑務所に違法な差し入れを投げ込んで手間賃をもらうアルバイトです。最初のシーンがそうでした。 でぶちんは、一人になると「土」を食べたがる、へんてこな少年ですが、おにーちゃんのファルー君は彼がかわいくてしようがないようです。 でも、生活は苦しいし、将来の見通しも立ちません。とうとう、ファルー君はでぶちんを離れて暮らす父に預ける決心をします。で、二人はお父さんの町に出発します。出発に当たってファルー君はなくなったお母さんのイヤリングを探し出して、ポロシャツの胸のポケットにさします。彼のなかにはお母さんがいるようです。弟のでぶちんに対する態度も「兄として」であることは間違いないのですが、でぶちんが「土」を食べるのを叱る様子には、どこか「母として」のようなところがあります。そんな兄弟ですが、でぶちんも兄を慕っています。 というわけで、旅が始まりますが、やってきた機関車は凸字型のジーゼル車で、運転手はナビ(N・ベガムロドフ)という名で、なんとなくいい加減な奴です。3両ほどの貨物車をけん引していますが、客車はありません。ふたりは運転室に座りこんで列車は出発します。 ここから、いわゆる「ロード・ムービー」です。あれこれ起こります。駅でもないのに運転手のナビの自宅の前に止まって着替えや弁当を受け取るあたりから自由奔放です。お次はかわいい二人組の女性を同じ運転席に載せるのですが、ナビの目つきが変です。狭い運転席の至近距離の空間で「おいおい」という感じの色目を使い始めます。一人の女の子を目的地で下すと、休憩とか何とか云って、残っていたもう一人と貨車にしけ込みますが、でぶちんが覗きに行きます。 そこから、てんやわんやのドタバタ旅行で書きたいことはたくさん起こりますが長くなるので端折ります。でも、そのあたりがこの映画の見どころだと思いました。実にあほらしくて楽しいのです。 やがて父親(R・クルバノフ)の住む町に到着します。なんと、医者をしているらしい父親は、医者である女性ネリー(N・アリフォワ)と暮らしていて結構裕福そうです。でも、二人の息子の突然の登場には、明らかに困惑しています。とても、でぶちんを預かる空気はありません。父親の態度に困ったファルーは、でぶちんを父の家に置き去りにして、あのいい加減な運転手の帰りの列車に飛び乗ります。 で、お終いなのですが、もちろんでぶちんはファルーより早く乗りこんでいて、にっこり笑ってファルーを待っています。 見ていればわかると思いますが、「当然」の結果でした。ファルー君は土を喰う弟アザマット君とこのへんてこな列車で旅を続けるのが「人生」というものなのです。見終えたぼくはとてもいい気分でした。 ファルーとアザマットの兄弟に拍手!、そして、なんだかわけのわからない運転手のナビに拍手!の映画でした。 監督 バフティヤル・フドイナザーロフ キャスト チムール・トゥルスーノフ(アザマット弟) フィルズ・サブザリエフ(ファルー兄) N・ベガムロドフ(ナビ運転手) 1991年・100分・タジキスタン・旧ソ連合作・モノクロ・35㎜・1:1.33・モノラル 原題「Bratan」 2021・12・06‐no125・元町映画館no103 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023.09.18 00:09:56
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