|
カテゴリ:映画 韓国の監督
ホン・ウィジョン「声もなく」シネ・リーブル神戸
半月ほど前の予告編で妙に気になっていたいた映画でした。ポスターのお二―ちゃんの顔を、どこかで見たことがあると思うのですがわかりません。 「どうしようかなあ・・・」 最終日に決断(そんな、おおげさな!)してやってきました。ホン・ウィジョン監督の「声もなく」です。 で、わかりました、この青年は「バーニング」で自動車に火をつけて焼いたあいつです。あのの映画の主役ジョンス青年を演じたユ・アイン君が今度は自転車に乗っていました。 韓国ではトップ・スター(?)の一人らしいのですが、まあ、そのあたりが全く分かっていないのがシマクマ君です。 で、そのユ・アイン君が丸刈りにして挑んだ役柄が、耳は聴こえるようなのですが、口をきくことができない青年テイン君です。 どうも妹ムンジュ(イ・ガウン)と二人、親のいない孤児の兄妹のようなのですが、チャンボク(ユ・ジェミョン)という、足の不自由な中年男に拾われて暮らしているようです。 で、このチャンボクというおっさんですが、表向きは「卵売り」で生活していますが、実は犯罪組織の死体処理というのが正業で、その手伝いをしているのがテイン君なのでした。 お話は、その下請け業者の二人に、雇い主の犯罪組織の方から誘拐してきた少女チョヒ(ムン・スンア)ちゃんを預かれという、まあ、考えてみれば何となくごまかしのききそうな下請け仕事ではなくて、直接犯罪に加担する仕事が舞い込んでしまい、断るに断れないまま誘拐事件の共犯になってしまうのですが、今度は、本家の犯罪組織の仲間割れで、誘拐事件は空中分解してしまい、引き取り手がなくなった少女チョヒちゃんだけが手元に残るという、まあ、ドタバタな展開の中の下請け犯罪者の悲哀(笑)を描いたかのような展開です。で、 これはなかなかの映画なのだ! と思いました。 まず、テイン青年が、口がきけないのですから当たり前ですが、 無言の表情がすばらしい!のです。無言の青年と二人の少女がゴミ屋敷のような棲家での生活のなかで、互いのコミュニケーションを成り立たせていく様子はなかなかな見ものでしたよ。正直、胸を打たれました。 もう一つ、この作品の演出の不思議は、死体の片づけなどという、まあ、重労働(?)を終えて、テイン青年が少女チョヒちゃんを自転車に載せて、妹ムンジュちゃんの待つ村はずれの棲家に帰る夕暮れの空が、チラシの写真のような絵にかいたような茜色なのです。偶然、夕焼けだったといってしまえばそれまでですが、 なんなんでしょうね、この茜色は? たしか(ちょっとあやふやですが)一度ならず美しい夕暮れを映し出すことで、この作品が単なる犯罪映画ではない、じゃあ何映画なんだといわれれば、まあ、答えに困るのですが、というようなことを感じさせました。 この作品の、英語の題名は「Voice of Silence」だそうですが、「沈黙のことば」とでも直訳した方が、映画の中のテイン青年の哀しさを正しく言い当てている気がしました。 完成度では及びませんが、是枝裕和監督の「万引き家族」に似たテイストを感じました。監督のホン・ウィジョンという人は1982年生まれの女性らしいですが拍手!ですね。 コントロールが少々甘い気はしましたが、いきなり剛速球でした。次の作品が楽しみな監督だと思いました。 テイン青年役のユ・アイン、そして二人の少女にも、もちろん拍手!でした。特にチョヒを演じたムン・スンアという少女のしたたかな演技は子供のすることとは思えない小癪さで、拍手!拍手!でした。 イヤ、ホント、見逃さなくてよかった、よかった。韓国映画は若い人もすごいです(笑)。 監督 ホン・ウィジョン 製作 キム・テワン 脚本 ホン・ウィジョン 撮影 パク・ジョンフン 編集 ハン・ミヨン 音楽 ヒョクジン チャン・ヨンジン キャスト ユ・アイン(テイン・口のきけない青年) ユ・ジェミョン(チャンボク・おっさん) ムン・スンア(チョヒ・人質の少女) イ・ガウン(ムンジュ・幼い妹) イム・ガンソン(ヨンソク) チョ・ハソク(チョンハン) スン・ヒョンベ(スンチョル) ユ・ソンジュ(イルキュ) 2020年・99分・G・韓国 原題「Voice of Silence」 2022・02・17-no20・シネ・リーブル神戸no136 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024.08.11 22:54:13
コメント(0) | コメントを書く
[映画 韓国の監督] カテゴリの最新記事
|