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カテゴリ:映画 ハンガリー・ルーマニアの監督
タル・ベーラ「ダムネーション/天罰」元町映画館
「タル・ベーラ前夜」という企画が元町映画館で始まりました。長い長い「サタン・タンゴ」という映画のわからなさに打ちのめされた監督なのですが、気になってしようがありません。 なにか、わかることがあるんじゃないか! そんな、淡い期待で、ちょっと勢い込んでやって来たのですが、再び打ちのめされてしまいました。見た作品は「ダムネーション 天罰」でした。 リフトというのでしょうか、人を乗せるベンチではなくて、石炭だか鉱石だかを積んでいるらしい荷箱が、延々と向こうまで続いている鉄塔と鉄塔をつなぐワイヤーにぶら下がっていて、向こうに運ばれていきます。それが最初の風景でした。 ああ、きっと、これを見ている奴がいるか、場所があるんだよな。 長々と続くカットが切り替わらないシーンをぼんやりと眺めながらそんなことを考え始めると、カメラがだんだんと引いていって、部屋の中から見ているシーンへと変化していき、そこに男がいるようです。 シーンが変わって、建物が映し出され、そこから誰かが出てきて、自動車に乗って、自動車が動き始めるシーンが淡々と続きます。建物は、少し離れたところから撮られています。 「ああ、ここにも人がいて、見ているんだよな」 そう思っていると、カメラが少し引いて、建物の手前、カメラがあると感じていた物陰にさっきから、ずっと男がいたようで、カメラが映し出していたシーンを見ていたらしいことがわかって、やがて、その男が建物に向かって歩き始めて建物のドアに向かいます。 ここまで、ずっと同じカットで、見ているぼくは、なんとなく男と同化していく気がし始めるのですが、次のシーンに打ちのめされました。 チェーンをつけたままの半開きのドアの中から女がにらんでいます。男と続けていた関係を拒絶しているようです。縋りつくように何かいう男をドアの外に残してドアが閉まります。女の拒絶の眼差しが異様にリアルなのですが、なんで、見ているぼくが、こんなにゾワゾワするのか。考える余裕もなくぐったりしてしまいました。 映画はリフトが動き続ける鉱山の町の時間のなかで、この男と女の醜態(?)、いや、愛(?)か、を描いているといっていいのかもしれませんが、何がどうなったのかぼくにはわかりませんでした。 だいたい、最初のシーンのドア越しの女が、酒場で歌を歌い、酒を飲みながら男に「町を出ていく」と宣言し、部屋でこの男と情事に及ぶ、それぞれ別のシーンの女と同一人物なのかどうかさえ見ているときにはあやふやで、主人公であるこの男が、かなり後半になってカーレルという名だとわかるのですが、女に何を求めているのか、男が口にする抽象的な「愛」のことばの、具体的に意味していることの見当もつかいないまま見ていましたが、とどのつまりには、瓦礫の中で犬と吠えあっている男の奇妙なリアリティだけ残して終わった映画に、何をいえばいいのでしょう。 雨が降り続き、降り続く雨に濡れていく壁や窓が延々と映し出され、一方に、何故そこにいるのかわからない人々の顔、顔、顔がじっとこちらを眺めている映画でした。 そういえば、タル・ベーラに学んだはずの小田香が「アラガネ」や「セノーテ」で映し出したあの顔とそっくりの顔のです。この何にも言わない顔の迫力って、なんなんですかね。 映像の印象は強烈でした。しかし、物語を納得したがっているぼくの意識は宙ぶらりんのままでした。さて、残り二本、見るかどうか、わけの分からない不安に、またまた、身をさらしにやって来るのかどうか、ああ、悩ましい限りです。 まあ、とりあえず、やっぱり、わけがわからないことを実感させてくれた監督タル・ベーラに拍手!でした。 監督 タル・ベーラ 共同監督 フラニツキー・アーグネシュ 原作 クラスナホルカイ・ラースロー 脚本 タル・ベーラ クラスナホルカイ・ラースロー 撮影 メドビジ・ガーボル 美術 パウエル・ジュラ 編集 フラニツキー・アーグネシュ 音楽 ビーグ・ミハーイ キャスト セーケイ・B・ミクローシュ(カーレル) ケレケシュ・バリ(歌手) テメシ・ヘーディ(クロークの女) パウエル・ジュラ(店主) チェルハルミ・ジュルジュ(夫) 1988年・121分・モノクロ・ハンガリー 原題「Kárhozat」・英題「Damnation」 2022・03・07-no30・元町映画館(no112) 追記 ところで、このブログをご覧いただいた皆様で楽天IDをお持ちの方は、まあ、なくても大丈夫かもですが、ページの一番下の、多分、楽天のイイネボタンを押してみてくださいね。ポイントがたまるんだそうです(笑) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024.03.06 10:12:37
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