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カテゴリ:週刊マンガ便 「松本大洋」・「山川直人」
松本大洋「ルーヴルの猫(上・下)」(小学館) いわずもながですが、こちらが上巻の表紙です。で、下が下巻です。
2022年の4月の終わりのマンガ便に上・下二巻で入っていました。松本大洋「ルーヴルの猫」(小学館)です。舞台は題名の通り、フランスのルーヴル美術館です。 「ルーヴルの猫」というぐらいですから、主人公は上巻・下巻の表紙に登場するネコです。上巻も下巻も、最初の見開きを飾っているのは「アモルの葬列」というルーブル美術館所蔵のこの絵です。 フランスのルネッサンス後期のアントワーヌ・カロン(1521-1599)という人の作品らしいです。フォンテーヌブロー派と呼ばれている流儀の絵ですが、天使たちが葬儀の行列をしている作品です。 ちょっと見るだけでも、いろんなことが描き込まれていて、最近はやりの「西洋絵画・謎解き解説」の格好の標的という感じです。 まあ、絵の講釈はともかく、問題はこの絵とこのマンガの関係です。マンガは現代のルーブル美術館に住みついている猫たちが主人公です。 上巻の始まりのページがこれですが、要するに彼らがルーブル美術館の主(ぬし)ということでしょうか。 片目、片耳のデカイ顔が「アオヒゲ」。目つきの悪い黒猫が「ノコギリ」。のんびり屋で食いしんぼが「フトッチョ」。毛のないやせぎすが「棒切れ」、そして、いつも絵を見ている白い子猫が、表紙にも登場した「ゆきんこ」です。 まあ、これくらいで、ネコ好きの皆さんは「ちょっとこのマンガ探してみようかな」となると思うのですが、美術館好きの人を惹きつける登場人物ももちろん登場します。 画面は引用しませんが、ルーヴル美術館で生まれ育ったといってもいい生い立ちで、ネコたちを守っている守衛のムッシュ・マルセル。「アモルの葬列」の修復を手掛けている世界一の修復士シャルル・ド・モンヴェロン。そして、その二人と猫たちの世界の秘密に立ち会うのがモンヴェロンの教え子で、今はルーヴル美術館のガイド、セシル・グリーンというわけです。メガネをかけた知的で、ナイーヴ、美しい女性です。 夜のルーヴル美術館で繰り広げられる時を超え、人と猫の境界を越えた世界を描くファンタジーでした。 「あんたは絵の声を聴いたことがあるかね」(上巻・P22)ムッシュ・マルセルのそんな言葉で謎の世界が始まります。というわけで、あとは探し出してお楽しみください。 日本での評判は知りませんが、アメリカのウィル・アイズナー漫画業界賞を受賞しているそうです。ああ、それからオール・カラーの豪華版が出ているそうです。できればその本を見てみたいのですが、少々高いですね(笑)図書館をお探しになるのでしたら、そちらがいいと思います。なんといっても絵が松本大洋ですからね。 こちらがオールカラー上・下です。 追記2023・02・04 松本大洋の「東京ヒゴロ」(小学館)という作品にハマっています。ここで案内した「ルーヴルの猫」とは、かなり趣が違いますが、なかなかな作品だと思います。 「ああ、こういうマンガを描くマンガ家も、まだ、いるのだなあ。」 そういう感慨が浮かんでくる作品です。とてもいい小説の味わいなのですが、間違いなくマンガなのです。そこをうまく言えないのが残念です。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023.06.04 23:51:19
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