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カテゴリ:映画 アメリカの監督
フィリップ・ファラルドー「マイ・ニューヨーク・ダイアリー」シネ・リーブル神戸 2022年の連休は人にビビって外出をあきらめていました。で、連休明けの5月9日、早速やってきたシネ・リーブルでしたが、当てがはずれて結構な入場者でした。
見たのはフィリップ・ファラルドーという知らない監督で「マイ・ニューヨーク・ダイアリー」という作品でした。 サリンジャーがらみのお話 という理由だけで選んだ作品ですが、客の大半がジジババだったのは、まあ、案の定という感じでしたが、お話の筋も古典的でした。 サリンジャーという作家は、日本でいえば第1次戦後派文学の次、「第三の新人」位の世代の人ですが、ノルマンジー上陸作戦にも従軍した、れっきとした「太平洋戦争」の「戦後文学」の人なのです。まあ、日本では、ここ10年、人気の翻訳家、柴田元幸や村上春樹の新訳が出たこともあって、「現代文学」みたいな扱いですが、野崎孝の名訳「ライ麦畑でつかまえて」(白水社)が出たのは1964年のことです。その後「フラニーとズーイ」とか「バナナフィッシュにうってつけの日」とかの「グラース家の物語」も、同じく野崎孝の訳でしたが、ぼくが高校生のころすでに新潮文庫の棚に並んでいました。 で、その後というか、1960年以降、サリンジャーは1作も書いていません。でも、映画のネタにはなるのです。不思議です。 4年ほど前に「ライ麦畑で出会ったら」という、サリンジャーを探しに行く少年の映画がありましたが、今回の「マイ・ニューヨーク・ダイアリー」はよく似た印象の作品でした。まあ、あの映画は主役が男の子で、女の子に出会うのに対して、今回は女の子で、おばさんに出会う話でした(笑)。 原作がJ・D・サリンジャーを担当する女性エージェントと新人アシスタントを描いたジョアンナ・ラコフという人の自叙伝なのだそうですが、映画は、端折って言えば「サリンジャー探し」の老若男女を阻止するお仕事をする女性の話でした。 「My Salinger Year」というのが原題だそうですが、新米アシスタントのジョアンナとサリンジャーの出会いは、はっきり言ってありきたりです。キャッチ・コピーに 「大人の自分探し」 とありますが、今一、ピンときません。 サリンジャーなんて読んだこともないのに、サリンジャー担当のベテラン・エージェントのアシスタントを務める90年代の文学少女の大胆さというか、幼さというかに圧倒されるばかりです。 そのうえ、映画の画面以外のアクシデントでしたが、隣席で寝入ったおじさんの大鼾が耳元に響きます。 「何をご覧になるおつもりでお座りになったのか存じませんが、そりゃあ、お眠りになるのも無理はない展開だとは思うのですが・・・!」 まあ、そういう同情というか、怒りというかを感じないではない展開でしたが、救いはありました。ジョアンナのボスを演じる女性の演技です。別に、特別な所作や表情をするわけではありません。しかし、なかなかいいのです。時代の存在感があるのです。 「誰だこれは?」家に帰って、チッチキ夫人にチラシを見せておしゃべりしていると、珍しく質問です。 「シガニー・ウィーバーって、出てはったん?!」 サリンジャーの「ライ麦畑でつかまえてThe Catcher in the Rye」は単行本出版だったようですが、それ以降の「グラース家シリーズ」は「ニューヨーカー」という雑誌に掲載された作品です。映画に出てくるベテラン・エージェントのマーガレット(シガニー・ウィーバー)は、その時代のアメリカの出版エージェントの匂いとプライドを感じさせる編集者という役柄を好演していました。まあ、なんといっても「エイリアン」に怯まない女性ですから、貫禄が違いますね(笑)。 というわけで、久しぶりのシガニー・ウィーバーに拍手!でした。 監督・脚本 フィリップ・ファラルドー 原作 「サリンジャーと過ごした日々」(ジョアンナ・ラコフ 著 井上里 訳 柏書房) 撮影 サラ・ミシャラ 美術 エリース・ドゥ・ブロワ 衣装 パトリシア・マクニール アン・ロス 編集 メアリー・フィンレイ 音楽 マーティン・レオン キャスト マーガレット・クアリー(ジョアンナ) シガニー・ウィーバー(マーガレット) ダグラス・ブース(ドン) サーナ・カーズレイク(ジェニー) ブライアン・F・オバーン(ヒュー) コルム・フィオール(ダニエル) セオドア・ペレリン(ノースカロライナ州ウィンストン・セーラム在住の青年) 2020年・101分・G・アイルランド・カナダ合作 原題「My Salinger Year」 2022・05・09-no66・シネ・リーブル神戸no150 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024.09.10 13:09:04
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