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谷川俊太郎・文 白根美代子・絵「あいうえおつとせい」(さ・え・ら書房) 「ことばあそびえほん」という「さ・え・ら書房」という本屋さんが出していたシリーズの1冊です。最初のページに、この絵本の文を書いた谷川俊太郎が「あいうえお讃」という文章で解説しています。そこから少し引用します。
あいうえおの文字をおぼえることは、もちろんたいせつですが、文字より先に、あいうえおの音の豊かさを、身につけることも負けずおとらずたいせつだと思うんです。ただ棒よみするんじゃなく、、その一行一行の、一音一音の表情を味わってほしい。そのためには、あいうえおを、言ってみればおもちゃとして、親子で遊んでみるのもおもしろいんじゃないかな。 というわけで、ことばあそびです。ゆかいな仲間のユナチャン姫とか、ひらがなが読めるようになったばかりですが、大きな声で読めそうですね。ラ行は「ら、り、る、れ、ろ!」とかわかってくると楽しそうです。 らいおんは なかがいい 二つめは少しむずかしいかもしれません。「がぎぐげご」とか「ぱぴぷぺぽ」とかいえるようになると、どんどんたのしくなるにちがいありません。 先程の「あいうえお讃」の中で解説しています。 各行の初めの文字、最終文字、または他の特定の文字を並べると、人名やある語や句になるこういう遊戯詩を、英語ではアクロスティックと呼ぶんですって。この本では、ひとつひとつの詩に、五十音の各行がかくれています。さがしてみてください。 アクロスティックというのは、英語の詩では「不思議の国のアリス」とかに出てくるのが有名だったと思いますが日本にもありますね。和歌に折句(おりく)とか沓冠(くつかぶり)とかいう技法がありますが、同じ遊びですね。 唐衣 きつつなれにし つましあれば はるばる来ぬる 旅をしぞ思ふ 「カキツバタ」が詠みこまれていますが、「伊勢物語」の東下りにある有名な一首です。高校時代に出会われたはずの和歌です。 沓冠(くつかぶり)というのは頭もお尻もという遊びです。 夜も涼し 寝ざめのかりほ 手枕(たまくら)も 真袖(まそで)も秋に 隔てなき風(兼好法師) 兼好法師の歌を、前から拾えば「よねたまへ」(お米下さい)、後ろからも「ぜにもほし」(銭もほしい)と無心しています。 それに対して、返事をした頓阿法師が「よねはなし」(お米ありません)、「ぜにすこし」(銭なら少し)と答えているわけです。歌の筋もちゃんと通っているところがすごいですね。この場合は生活がかかっているようで、遊びといっていいのかわかりませんが、一般的に言えば、江戸時代に至るまで、和歌に関わる「ことばあそび」はいたるところい出てきますね。谷川俊太郎は、そういう文化の詩的な継承者だと思います。 お家で、おチビさんやお母さんの名前とかでアクロスティックとか折句とかで「ことばあそび」を遊ぶのもありそうですね。なかなか文化的なあそびですよ(笑) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023.05.14 08:55:09
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