|
カテゴリ:映画 スペイン・ポルトガルの監督
ルイス・ブニュエル「ブルジョワジーの秘かな愉しみ」元町映画館
「ルイス・ブニュエル監督特集―男と女」という企画の2本目です。ああ、もちろんシマクマ君が見た2本目ということです。1974年に日本で劇場公開されたらしいのですが、なんとなく見た記憶がありました。何も覚えていたわけではないのですが、なんだか異様に懐かしい気持ちになりました。 1本目に見た「昼顔」は、どっちかというと心理描写に呆れたという気分の方が強かったのですが、こっちは、「ああ、70年代の映画やなあ。」という詠嘆というか、「ルイス・ブニュエルというのはこのバカバカしさなんだよなあ。」という、まあ、実に個人的な感想ではあるのですが、今となっては納得してしまいました。 たぶん、極東の島国の文化観や歴史観では計り知れない、ヨーロッパ産のブルジョワジーという階級というか、種族のようなものがあって、ヨーロッパの人には見かけと振舞でわかるのでしょうね。 で、映画は彼等の内実は食欲と性欲という、とてもまんまな「欲望」なのだと描いているんですね。だから、永遠の欲求不満に苛まれているわけで、当人たちは気づいているのかいないのか、たぶん気づいていないようなのですが、どこにたどり着くのかわからない道を当人たちだけで、てくてく歩いているようなものなのでしょうね。三度ばかり、そういう、唐突なシーンが挿入されていましたが、かなりシビアな批評表現なのでしょうね。 その上、登場する6人のブルジョワの中に一人インチキというか偽物がいるんですよね。フェルナンド・レイ扮するミランダ共和国とかの駐仏大使ですね。地位を利用してコカインの密輸かなんかで稼いで、それで「ブルジョワ」に取り入っているという役柄ですね。彼は、まあ、不安なわけで、だからこそ、とりわけ、ややこしい夢を見ちゃうのでしょうね。 性欲と食欲に浸っている能天気なブルジョワだけじゃない、まあ、露骨な権力欲で成り上がった、植民地主義の田舎者を異物として混入させているところは、ヨーロッパの人が見ると、かなり笑えるのだと思うのですが、シマクマ君には、素直に笑えないですね(笑いましたけど)。笑うと知ったかぶりをしている自分が恥ずかしいという感じです。 でも、一つ一つのプロットは人をくった話ばかりで、庭師になりたい司祭さんとか、シェフの死体が安置されている調理場とか、こむずかしく考えることを真っ向から拒否っていて、なかなか過激でした。 で、この映画は1972年のアカデミー外国語映画賞なんですね。まあ、それも含めてかなりなブラック・コメディでした。 そういうわけで、ミランダ共和国の大使とかをやっていたフェルナンド・レイと、今さらながらですが、人をくった演出の監督ルイス・ブニュエルに拍手!でした。 監督 ルイス・ブニュエル 脚本 ルイス・ブニュエル ジャン=クロード・カリエール 撮影 エドモン・リシャール 美術 ピエール・ギュフロワ 衣装 ジャクリーヌ・ギュイヨ 編集 エレーヌ・プレミアニコフ キャスト フェルナンド・レイ(ラファエル・アコスタ駐仏ミランダ共和国大使) ポール・フランクール(フランソワ・テヴノ) デルフィーヌ・セイリグ(シモーヌ・テヴノ) ビュル・オジエ(フロランス シモーヌの妹) ステファーヌ・オードラン(アリス・セネシャル) ジャン=ピエール・カッセル(アンリ・セネシャル) ジュリアン・ベルトー(庭師志願の司教) ミレナ・ブコティッチ マリア・ガブリエラ・マイオーネ ミシェル・ピッコリ(大臣) 1972年・102分・PG12・フランス 原題「Le charme discret de la bourgeoisie」 日本初公開:1974年5月 2022・05・23-no71・元町映画館no128 no
お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023.12.21 23:57:48
コメント(0) | コメントを書く
[映画 スペイン・ポルトガルの監督] カテゴリの最新記事
|