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アッバス・キアロスタミ「桜桃の味」元町映画館 今日はキアロスタ三監督の「桜桃の味」でした。不思議といえば、まあ、実に不思議な映画でした。
自動車に乗って、雑踏の中、町ゆく人に「いい仕事がある」と声をかけている、ちょっとインテリ風の主人公が自殺願望の男だとわかるまでかなり時間がかかりました。 運転していたこの男は、三人の男と会うのですが、最初に車に乗せたのが若いクルド人の、いかにもおぼこそうな兵隊さんだったのですが、彼の反応が一番印象に残りました。 「明日の朝、穴の中に横たわった自分に声をかけ、 返事があれば助けおこし、返事がなければ土をかけてほしい。そうすれば大金を君に渡そう」 まあ、そんなことを隣に乗せた青年に、まじめな顔をして話しかけるのですが、映画をここまで見ているぼくにも、運転しているこの男が何を言っているのかよく分かりませんでした。 「この人はなにを言っているのだろう?」 そう思いながら、基地へ帰るつもりの青年兵士を見ていると、訝しそうな眼をして首を振るだけで、運転手のすきを窺うように、何も言わず、自動車から降りて、そのまま道のない坂を駆け下りて逃げて行ってしまいました。 で、ようやく、運転している男が言っていることの意味が見ているぼくにも、なんとなくですが、わかったというわけです。まあ、始めにも書きましたが、自殺したいけど、死んだ後、何とかしてほしいというわけなのです。 「なんなんだ、この映画は?!」 今度は見ているぼくが訝しさの虜でした。そのあと、アフガニスタンからきた神学生、トルコ人の剝製士の老人とのやり取りがあって、神学生とのやり取りは、ぼくが寝てしまっていて覚えていませんが、トルコ人の老人との会話は覚えています。 一つ、わしの思い出を話そう。結婚したばかりの頃だ。生活は苦しく、す まあ、こんな詳しく覚えているはずはなにので、これはどっかからの引用ですが、この記事を投稿している今となってはどこでコピーしたのかもわかりません。で、それは、それとして、こんなことを男に話しかけるのです。桑の実が、どこで題名のサクランボになったかというと、このトルコ人の老人が、この後、詩かなんかを読むんですよね。で、その詩に出てくるのがサクランボで、題名はサクランボになるのですが、見ていたぼくには桑の実の話でした。 で、なおかつ、最後の最後は、まあ、「こういう映画を撮っていた俳優はぼくで、あの人が監督です。」とでも言わんばかりに、「映画中映画」というか、「メタ映画」というかの関節外し技が待っていて、もう一度アゼン!でした。 まあ、映画日記というか、見た映画については何か書き残そうというのが、今のところの映画館徘徊の目的の一つなので、こうして、感想を絞り出しているのですが、いやはや、困った作品だったのですが、1997年のカンヌ国際映画祭のパルム・ドールなんですよね。 ようするに、ぼくにはこの主人公が「なにを言っているのか」わからないのですね。トルコ人の老人が言っていることは、ある意味、ありきたりですが、わかるのです。でも、この男のいっていることはわからない。だから、この男がいるほこりが立ち込める世界も、満天の星空も迫ってこないのです。 断っておきますが、ぼくが、あのクルド人の青年のようにこの男のシチュエーションを拒絶しているわけではありません。途中少々寝てしまったとはいえ、出て行ったわけではないのですから。映画がぼくを拒絶していたのです(笑)。繰り返しですが、参りました!(笑) ああ、そうだ、彼はよかった、クルド人の青年。彼に拍手!です。 監督 アッバス・キアロスタミ 製作 アッバス・キアロスタミ 脚本 アッバス・キアロスタミ 撮影 ホマユン・パイバール 編集 アッバス・キアロスタミ キャスト ホマユン・エルシャディ アブドルホセイン・バゲリ アフシン・バクタリ アリ・モラディ ホセイン・ヌーリ 1997年・98分・G・イラン・フランス合作 原題「Tame gilas」 日本初公開 1998年1月31日 2022・04・06-no49・元町映画館no130
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最終更新日
2024.01.07 18:30:48
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