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アッバス・キアロスタミ「トラベラー」元町映画館 特集上映「そしてキアロスタミはつづく」で今日見たのは「トラベラー」でした。1974年の作品で、キアロスタミ監督の長編デビュー作だそうです。 主人公のガッセム君は10歳、小学校4年生、シマクマ君家のチビラ君の一人と同い年です。ガッセム君を演じるハッサン・ダラビ君は、同じキアロスタミ監督の名作「友だちのうちはどこ?」の主人公アハマッド君と年齢はほぼ同じだと思いますが、顔立ちは、実に対照的な子憎たらしい顔をしています。 こちらがアハマッド君。 こちらがガッセム君。(映画.com)
で、この子憎たらしい少年がテヘランまで行って、ホンモノのサッカーの試合が見たいという一心で、ありとあらゆる子憎たらしいズルをしてお金を稼ぎ、バスに乗ってテヘランまで行って、入場料でボッタクラレて、とどのつまりは草臥れ果てていたのでしょう、試合が始まるのが待ちきれず、寝込んでしまって、念願の試合を見ることかなわず、一文無しになって知らない街をトボトボ歩くという、芥川龍之介あたりが書きそうな哀れな顛末の「トラベラー」を演じるお話でした。 うまいものですね。子供が子供であるという、イノセンスの大胆さ、意地悪さ、切なさ、そして罪の無さを、あたかもドキュメンタリーであるかのような距離感で描いていました。 だから、言わんこっちゃないでしょ!なにやってんの、あんたは! きっとこんなふうに叱り飛ばされて、とどのつまりは泣きが入りそうなのですが、監督は泣きが入る、その直前の少年の後ろ姿を高みから映しながら物語を切り上げるのでした。 発覚して叱り飛ばされたか、あるいは気づかれないまま誤魔化しきれたか、経緯や結末の違いはあるのですが、「かつて、たしかに、ぼくもガッセム君だった。」とでもいうような、あれだけは忘れられないというような、そんな悪事の記憶に浸りながら、それでもやっぱり、ガッセム君のように偽カメラで騙したりしたわけではありませんが、「カメラにフィルムが入っていなかったこと」はいつまでも、誰にも、言わないでおこうと、自分に言い聞かせる気分の帰り道でした。 絶妙の距離で少年を追ったキアロスタミ監督と、実に哀れなガッセム君を演じたハッサン・ダラビ君に拍手!でした。 監督 アッバス・キアロスタミ 原案 ハッサン・ラフィエイ 脚本 アッバス・キアロスタミ 撮影 フィルズ・マレクザデエ 編集 アミール・ホセイン・ハミ 音楽 カンビズ・ロシャンラバン キャスト ハッサン・ダラビ マスウード・ザンドベグレー 1974年・72分・G・イラン 原題「The Traveler」 日本初公開1995年9月16日 2022・04・04-no46・元町映画館no134 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024.05.09 21:23:58
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