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鶴見俊輔「鶴見俊輔、詩を語る・(聞き手谷川俊太郎・正津勉)」(作品社) 鶴見俊輔が2015年、93歳で亡くなって7年経ちました。彼は1922年、大正11年生まれだそうですから、今年が生誕100年なのだそうです。
2003年、「midnight pres」という詩の雑誌で行われた対談原稿の書籍化だそうです。詩人の谷川俊太郎と、彼も詩人ですが、鶴見俊輔の同志社大学での教え子、「へんな生徒」だった正津勉と、時々登場する編集者の三人が聞き手で、雑誌掲載時は「歌学の力」という題だったそうですが、本書では「詩を語る」と改題されています。 鶴見俊輔には、たとえば「詩と自由」(思潮社・詩の森文庫)などの新書版の詩論がすでにありますが、本書は三人の語り合いの面白さが、実に新鮮で一気に読めました。二つの著作集、書評集、対談集、マンガ論、まあ膨大な書籍が残されている鶴見俊輔ですが、彼の足跡をたどってきたような人にとっても、読んで損はない「新著」だと思いました。 鶴見俊輔は、一応哲学者というわけですから、彼がどんな詩を書いていたのかというと、こんな詩です。 KAKI NO KI 本書の談話の中では、正津勉が鶴見俊輔の詩の中では「KAKI NO KI」という詩が好きだということをいっていて、引用されています。 で、巻末というか、本書の後半の「鶴見さんの詩心をより深く知るためのアンソロジー」という章の中にこんな文章があります。 わたしは最後の鶴見俊輔ゼミの生徒でした ほとんど教室には出なくて夜昼なく遊びほうける まったくド阿保なバカ学生であって いまさらながら深く悔やまれるばかり どうにもなんとも教壇で説かれることに ほんとうにさっぱり理解が届かいないできた というようなできの悪い部分にかわらなくも こののちもずっと先生の教えのもとにあります 正津勉は詩人ですが、さすがですね。ここで戯れのように記された彼の4行が、鶴見の詩の読み方の一つを指し示してくれていて「そうですよね」とうなづきたくなります。あれこれ言いませんが、70歳を前にして、ようやく鶴見俊輔がどんな場所で、どんなふうに立っていたのか、少し気づけるようになったのかもしれません。 「鶴見俊輔、詩を語る」の方の面白さは、どこかで探してもらって、お読みいただくほかはないですね。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2022.09.13 00:14:48
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