ユライ・ムラヴェツ・Jr.「ウクライナから平和を叫ぶ」シネ・リーブル神戸 シネ・リーブルの1週間限定上映のドキュメンタリー映画でした。最終日に「やっぱり!」と思って見に来ました。映画はスロバキアのユライ・ムラヴェツ・Jr.という写真家が、テレビ・クルーと一緒にウクライナに入り、現地で生きている人々一人一人のポートレートと発言を記録した「ウクライナから平和を叫ぶ Peace to YOU ALL」作品でした。
ぼくはロシアによるウクライナ軍事侵攻で、初めて旧ソビエト崩壊後のウクライナをはじめとする旧ソビエトの独立地域の悲惨に気づきました。おそらくウクライナだけではないのでしょうね。 ウクライナに関しては、セルゲイ・ロズニツァの「ドンバス」という映画で衝撃を受けました。国を二分する親ロシア派、反ロシア派のせめぎあいが、明らかな軍事侵攻、「戦争」という手段によって明確化してきていますが、ゴルバチョフの大統領辞任で始まったソビエト解体以降の、旧ソビエトの実態に関心を持つということを全くしてこなかったので、「ドンバス」という作品が暴いているのが何で、何が明らかになっているのかさえ分からないというのが正直なところでした。 今回の映画に関しても、なんとなく億劫な気分でしたが、見てよかったですね。映画そのものが2016年に制作されているので、今、目の前で進行している事態と直結するわけではありません。しかし、あくまでも第三者の写真家として、2016年現在のウクライナで起こっていたことに対して、老人であり、少女であり、ホームレスであり、傷痍軍人であり、そのほかさまざまな人達がどう考えて暮らしているのか、ストレートな答えを映し出しているこのフィルムは、かつて、歌人の宮柊ニが詠んだ歌を、くっきりと思い出させてくれました。