武田一義「ペリリュー外伝1」(白泉社) 2022年9月のマンガ便に入っていました。「ペリリュー楽園のゲルニカ11巻」(白泉社)が完結したのが、確か、2021年、昨年の暮れだったと思いますが、今はやりの言葉でいえばスピン・オフ作品らしいです。武田一義の「ペリリュー外伝1」(白泉社)です。「片倉分隊の吉敷」
「Dデイ」
「田丸と光子」
「ペリリュー島のマリヤ」
の4作品が収録されていました。
表紙の結婚式の写真は、復員して漫画家を志した田丸さんが、光子さんという伴侶と出会い、新しい生活を始めるままでが描かれている「田丸と光子」の1シーンです。
それから、こちらが1話目の「片倉分隊の吉敷」の最終ページでした。 このシーンの隣のページがこれでした。 このページで作者武田一義は「あとがき」としてこう書いています。
昭和19年10月、本編「ペリリュー 楽園のゲルニカ」では第2巻14話頃のお話です。
西浜の戦いで、所属していた隊が壊滅した田丸と吉敷は、天山の壕で島田の指揮下に入りました。米軍の掃討部隊と戦うため、目下の課題は不足している水や食料、武器弾薬の調達。
田丸が功績係の仕事をしている一方、吉敷は島田の命令で、片倉分隊と行動し、今回のおはなしのように、より危険度の高い任務についていました。
今、塹壕の隅に座り込んで、親友田丸君に会いたがっている吉敷君が、どんな任務についていたかについては、本編をお読みください。田丸
田丸と話そう
なるべく
ここと関係ねー
どうでもいいことを
作者は「より危険度の高い任務」と言っていますが、確かに危険な任務でした。しかし、戦場がどうやってただの人間から「人間」であることを奪っていくのか、凄惨で酷薄な体験を強いていくのか、その体験の中で、ただの人間たちは、どうやって生きのびていくのか。
「Dデイ」のアメリカ兵にも、「ペリリュー島のマリア」のマリアにも、生きて帰ってきた田丸さんにも、そして、ここで、田丸君を恋しがっていて、でも、結局、戦場で死んでしまった吉敷君にも、共有されたはずの悲惨を、そっちからも、あっちからも書かずにいられないというのが、武田一義に、このスピンオフ作品を書かせている動機ではないかと思いました。
戦場にいる敵も味方も、戦地の島の老人も子供も、兵士の家族や恋人も、あらゆる人たちを巻き込んでいく
戦争という多面性の怪物
の姿を子どもような表情の登場人物たちで、どこまでも書き続けてほしいですね。新たに書き始めた武田一義に拍手!でした。