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アッバス・キアロスタミ「風が吹くまま」元町映画館 キアロスタミ特集「そしてキアロスタミはつづく」の4本目です。「トラベラー」と二本立てで見ました。「トラベラー」は1974年のデビュー作だそうですが、こちらは1999年のヴェネチア国際映画祭審査員グランプリ受賞作だそうです。
見たのは「風が吹くまま」でしたが、ラストの麦畑が最高でした。 死にかけているおばあさんの死を待って、その地方独特の葬儀を取材しようと大都会テヘランから、クルド系の小さな村を訪れたテレビ・クルーの責任者が主人公でした。 もうそれだけで、「ちょっと、アンタ等なあ!?」という設定で、なんで、そんな、あまりに現代的な設定が思いつけるのか、まず、呆れました。 死を待つ時間といえば聞こえはいいですが、死者であろうが生者であろうが、商売のネタになるものはすべて食い物にしていく現在という時間があるということを冷静に見つめているのが、キアロスタミという表現者なのですね。 電気工事の集団に成りすまして村に入り込んだテレビ・クルーのディレクターだかプロデューサだかをしている主人公ベーザードが、電話も通じていないし、電波の受信もおぼつかない田舎の村で、持参のケータイを利用するために、村の裏山のジグザグの坂道をホコリをけたてながら自動車で駆け上がり、テレビ局に言い訳をするんです。 「まだ、死にません!」 死んでくれないので、仕事にならない焦りとイライラが、映画の前半の気分を作っていきます。 で、電話をかけている、木が一本くらいしか生えていないはげ山が村の墓地なわけですが、テヘランに言い訳をしている彼のそばで、井戸を掘っている男がいるんです。なんか、その不釣り合いが笑えます。 で、まあ、場所が場所だけに人の骨とか、、変なものがいっぱい出てくるわけで、それを、まあ、三日のはずが、一週間、二週間と時が経っていくわけで、日課のように坂を車で駆け上がり、穴を覗きながら電話するということを繰り返しながら無為な時間がながれるんですが、とうとう、オバーさんが死ぬ前に穴を掘っていた男が生き埋めになるという事故が起こります。 ここから、「死を待っていた男」が「命を助ける男」に変貌するというのが物語でした。本人も、たぶん、仕方なしなのですが、見ているこちらは「いいじゃないか!」という気分です。 生き埋めの青年を助け出し、病院へ運び、村にやって来た医者に老婆を診察させ、医者の単車に同乗して薬をもらいに行く、風が吹き、麦の穂が揺れる中、二人が乗ったバイクが走ってきて、走っていきました。 なかなか、いいセリフもあるのですが、なんというか、なによりも、こんなさわやかなシーンが待っているとは思いもよりませんでした。麦畑が素晴らしい!いやはや、スゴイですね。キアロスタミに心から拍手!でした。監督 アッバス・キアロスタミ 原案 マハムード・アイェディン 脚本 アッバス・キアロスタミ 編集 アッバス・キアロスタミ 撮影 マームード・カラリ 音楽 ペイマン・ヤズダニアン 助監督 バフマン・ゴバディ キャスト ベーザード・ドーラニー ファザード・ソラビ 1999年・118分・G・フランス・イラン合作 原題「Le vent nous emportera」 日本初公開1999年12月4日 2022・04・04-no47元町映画館no146 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023.12.27 23:44:14
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