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バルディミール・ヨハンソン「LAMBラム」kino cinema 神戸国際 チラシか何かでタル・ベーラというハンガリーの映画監督が制作にかかわっているというのを見かけて気になりました。三宮の国際松竹という映画館がkino cinema 神戸国際という名前に変わって、たぶん、初めてやってきました。見たのはバルディミール・ヨハンソンという監督の撮った「LAMB」というアイスランドが舞台の作品でした。
やって来たのは11月4日で、祝日明けの金曜日だったのですが、映画館は空いていました。開場の15分ほど前にチケット販売ブースに行ったのですが、作品名をいうと、全席空欄の会場図が表示されたので、思わず尋ねました。 「どこでもいいの?」会場は100人を超えるホールでしたが、結局、最後までぼく一人でした。こういう経験は、まあ、初めてではありませんが、映画が映画だったので、落ち着きませんでしたね(笑)。 で、映画ですが、少しくすぶったような白い画面で始まりました。雪原にガスが立ち込めているようで、カメラが前に進んで、そのガスが段々晴れてくると10数頭の馬が見えてきました。足の太い、大型の、道産子みたいな馬です。その馬群が、いったん右に進みながら、カメラを避けるように左に動き、逃げっるように画面から消えると、雪原のずっと向こうに人の住処のような明かりが見えて、だんだん近づいていくと羊小屋にたどり着くシーンから始まりました。 全編を見終えて、このシーンが一番印象に残りました。 実は、この作品のラストは草原の真ん中で主人公のマリア(ノオミ・ラパス)、上のチラシで羊を抱えている女性ですが、その彼女が草原の真ん中に立ち尽くし「これがアイスランドですよ。」といわんばかりの、緑の草原が続き、遠くに黒っぽい山の姿が見えるのですが、その彼方を、何かを探すよう見つめるシーンなのですが、彼女のその視線は、たぶん、最初の映像で、見ていた僕が「これは誰なんだ?」と感じた、最初のカメラの視線に呼応していたのでしょうね。 二つの視線は、映画のなかでは交差するだけで、ぶつかり合うことはなかったと思いますが、ぼくにとって、この映画の分かりにくさは、その、互いの視線がぶつからないという一点でした。 登場人物の名前とか、羊飼いとかのディテールはキリスト教的な神話を彷彿とさせますが、見ながら感じたのは、どちらかというと、どこの古代社会にもある異類婚譚とか獣人伝説をネタにしていた印象のほうだったのですが、一方で、マリアという女性が、母性的な、あるいは、女性的な、神経症的な、現代的人格を内包した人物として登場してくることが、最初の映像がイメージさせた、時間と空間を超越した北の果ての異界という、ぼくの勝手な思い込みと、なかなかマッチしないという違和感が最後の最後までぬぐえなかった作品でした。 マア、見る人によれば「そこがいい!」ということかもしれませんが、ぼくには「わけわからん!」という不満の残る、突然の終幕でした。 まあ、そんな映画を、広いホールの豪華なソファーに寝転ぶように座って、たった一人のまま見終えるという「異界」体験はなかなかの体験ではあったのでした(笑) それにしても、まあ、ぼくごときが心配することではありませんが、映画館は大丈夫なのでしょうか。この映画、曲がりなりにも(?)カンヌで賞をとった作品なのですよ。主演のノオミ・パラスという女優さんだって、ぼくでさえ初めてではない有名俳優だと思うんですけどね。この映画の演技も拍手!でしたよ。 監督 バルディミール・ヨハンソン 脚本 ショーン バルディミール・ヨハンソン 撮影 イーライ・アレンソン 美術 スノッリ・フレイル・ヒルマルソン 衣装 マルグレット・エイナルスドッティル 編集 アグニェシュカ・グリンスカ 音楽 ソーラリン・グドナソン キャスト ノオミ・ラパス(妻マリア) ヒナミル・スナイル・グブズナソン(夫イングヴァル) ビョルン・フリーヌル・ハラルドソン(夫の弟ペートゥル) 2021年・106分・R15+・アイスランド・スウェーデン・ポーランド合作 原題「Lamb」 2022・11・04-no122・kino cinema 神戸国際no6
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最終更新日
2023.12.20 10:42:54
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