ちばてつや「ひねもすのたり日記5」(小学館) 2022年12月のマンガ便です。ちばてつやの「ひねもすのたり日記5」(小学館)です。ちばてつやさんは80歳を越えられて、マンガ学の大学の学長さんだった仕事もおやめになって、しかし、この日記はお続けになっているようで、この「ひねもすのたり日記5」の最終回の159回は2022年の8月15日の日記でした。
これが、その最終回の見開きページです。 向かって右のページのシーンにはこんなキャプションがついています。
昭和20年8月15日、中国奉天(現瀋陽市)父が働いていた印刷工場の中庭で泥遊びしてました。
左のページにはこうです。
列車から降ろされ線路伝いに歩く人々
動けなくなりうずくまる人々も。
ちばてつやのファンであれば、このシーンは、いつか見たことがあるシーンだと思います。それも一度ならずです。しかし、マンガ家自身は、2022年の8月15日に想起したシーンをお書きになっているわけで、決して、同じ絵を使いまわされているのではないでしょう。それが、幾たびも書かれた絵だったとしても、これは、今年の8月15日の絵です。
そういう迫力が、このページにはあると思います。
骨折、心不全、あれこれ、あれこれで、入退院を繰り返していらっしゃる日々の日記です。一方で「あしたのジョー」をお書きになったころの思い出が挿入されています。病気も、作品制作の思い出も、淡々とのんきです。力石やジョーを戦いの末に殺してしまわれた作品で、青年だったぼくのような人間の心を鷲づかみされたマンガ家なのですが、彼の作品を支えてきたのは生きていることを素直に肯定する思想なのだということを、読み手のぼくも素直に感じる様子です。
どうか、この「ひねもす」な日々が、一日も長く続くことを祈らずにいられませんね。
追記2024・08・19
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