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ゴジラ老人シマクマ君の日々

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2022.12.30
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​アニエス・バルダ「冬の旅」元町映画館​
「ああ、アニエス・バルダが終わってしまう!」
​ ​​夜の7時を過ぎてから映画館にやってくるのは久しぶりです。先週からやっていたアニエス・バルダ「冬の旅」は、二週目に入って19時30分から1時間半です。終わるのが21時を回って、そうなると、垂水駅の駐輪場は閉まってしまいます。​
​「ああ、どうしよう!」​
​ ははは、バスで行けばいいのです。​​で、バスでやってきました。
​ アニエス・バルダ「冬の旅」です。​
 冬なのでしょうね、緑がなくて、煙が上がっていて、トラクターが動いているとうです。冬のブドウ畑で働いている人がいます。ちょっと荒涼としたブドウ畑の風景が、だんだんズーム・インされていって、女性の凍死体が発見されます。見ていて、唸りました。
​「ワぁー、そこから始めるんかい!」​​
​ ​亡くなっていたのは、最近この辺りを旅していた18歳の少女モナ(サンドリーヌ・ボネール)でした。証言者が、その少女との出会いを、次々に語りはじめました。​
​ 通りすがりのこの少女が、どこから来たのか、どこへ行こうとしていたのか、それはだれにも分かりません。自由だと評する人もいれば、無鉄砲だと非難する人もいます。いかにも親切に援助、宿を貸す人もいれば、隙を見て襲いかかろうとする乱暴者もいます。
 いろんな人との出会いと別れのシーンで映し出される彼女の表情が笑顔であれ、怒りであれ、見ているぼくに浮かび上がってくるのは、踏み外せば奈落であるタイト・ロープで綱渡りして少女の姿でした。誰もが、通りすがるよそ者として見ているだけです。​

 村人たちが熱狂するブドウ祭りの仮面に恐怖しながら、酒まみれ、泥まみれで奈落に転げ落ちる少女の姿を映して映画は終わりました。
​​ 1985年の映画です。円熟のアニエス・バルダの最大のヒット作だそうです。原題「Sans toit ni loi」です。訳せば「屋根も無く、法も無く」でしょうね。​​
​​ 人間はだれもが死にますが、誰もが、18歳で放浪者になって、冬枯れのブドウ畑の側溝に転がり落ちで凍死するわけではありません。にもかかわらずアニエス・バルダがこの作品をとった理由は「Sans toit ni loi」に明示されているのではないでしょうか。​​
 40年以上も昔に撮られた作品ですが、自己責任などというインチキな流行り文句に踊らされている現代社会をこそ根底から批判する傑作だと思いました。上映してくれた元町映画館に感謝ですね。
​​​ 勇敢な、しかし、哀れな18歳の少女モナを演じたサンドリーヌ・ボネール監督アニエス・バルダ拍手!でした。​​​ 
​「ああ、あの娘とおんなじやん!」​
 ​元町映画館からの暗い帰り道、思い出した映画があります。​​浮かんできたのはケリー・ライカート「ウエンディ&ルーシー」(2008)です。あの映画のラスト、貨物列車に座り込んだウエンディ(ミシェル・ウィリアムズ)の姿が映し出される、忘れられない、あのシーンでした。​​
監督 アニエス・バルダ
製作 ウーリー・ミルシュタン
脚本 アニエス・バルダ
撮影 パトリック・ブロシェ
編集 アニエス・バルダ  パトリシア・マズィ
音楽 ジョアンナ・ブルズドビチュ
キャスト
サンドリーヌ・ボネール(モナ18歳)
マーシャ・メリル(ランディエ教授)
ステファーヌ・フレス(ジャン=ピエール)
ヨランド・モロー(ヨランド)
パトリック・レプシンスキ(ダヴィッド)
ジョエル・フォッス(ポロ)
1985年・105分・フランス
原題「Sans toit ni loi」
日本初公開1991年11月2日
2022・12・16-no139・元町映画館no152
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最終更新日  2023.12.06 21:14:19
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