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カテゴリ:演劇「ナショナルシアターライブ」でお昼寝
ナショナル・シアター・ライブ(National Theatre Live)
トム・ストッパード「レオポルトシュタット」シネリーブル神戸 久しぶりのナショナルシアター・ライブです。観たのはトム・ストッパードの戯曲「レオポルトシュタット」で、パトリック・マーバーという人の演出です。 トム・ストッパードという人は、ボクがナショナルシアター・ライブを初めて観た「ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ」という、シェークスピアのハムレットに登場する人物のお芝居の作者で名前は知っていました。 今回は、ユダヤ人であるストッパード自身のルーツに着想を得た戯曲だそうですが、85歳で、イギリス人である老脚本家が、どんなふうにルーツに迫るのか、興味津々という気分でやって来たシネリーブル・神戸でした。 題名の「レオポルトシュタット」はオーストリアのウィーンの街の名前だそうです。1899年、この街で暮らすユダヤ人の家族が、おそらく、大きなお屋敷なのでしょうね、住居の一室につどっています。キリスト教徒ならクリスマスのお祝いでしょうか、過ぎ越しの祭りの集まりのようです。舞台の上の登場人物の数の多さに、目を瞠ります。それぞれが思い思いにしゃべっていて、子供が思い思いに、そのあたりを走りまわっている印象です。上のチラシの上半分の写真のシーンです。 その場を取り仕切っているのは、おばーちゃんのようです。19世紀の最後の年のウィーンです。登場人物たちは、思い思いに近況を語りますが、ユダヤ人の神話的歴史とヨーロッパでの迫害の歴史が、この部屋の人たちの心の底に流れていることを告知するかのような一幕です。 そこから、1900 年、 1924 年、 1938 年、 1955年と5幕の構成で同じ部屋が舞台になっていましたが、うかつなことに、この部屋のある街がレオポルトシュタットだと気付いたのは5幕目の1955年のシーンでした。 1899年の第1幕からは55年、4幕の1938年からでも17年たち、第二次世界大戦後、ようやく独立が認められたオーストリアのウィーン、そのユダヤ人の街、レオポルトシュタットの屋敷に帰ってきたのは、第4幕、1938年に子供だった二人の男の子と、アメリカに渡っていて無事だった女性(名前がよくわかりませんでした)の三人だけでした。 ここまで、あんなに大勢いた登場人物が、ここでは、たった三人です。さすがのボクにも、その理由はわかりました。とんでもない時代が過ぎていったのです。 数学好きだった少年ナータン(上の写真であやとりをしている少年です)、はアウシュビッツで、家族をすべて喪いながら、奇跡の生還を果たし、今では大学で教える数学者で、この屋敷で暮らしているようですが、収容所暮らしの結果でしょうか、実年齢よりずっと老いた風情です。 もう一人の青年レオは、イギリス人のジャーナリストと再婚した母に連れられて渡英した結果、イギリス人のアイデンティティで今日まで生きてきているようです。自分の本名がレオポルドで、ユダヤ人だということさえ知らない様子です。 ドラマのクライマックスは、幼い日の記憶をすべてを忘れてしまっていたレオが1938年のあの日、一族がそろった最後の日のことを、ナータンから手の傷を指摘されることで、ありありと思いだす場面でした。 うまいものです。50年を超える家族の歴史と、1000年にわたるユダヤ人迫害の歴史を、レオとナータンの再会の、哀切な喜びのシーンによって、見ているぼくに焼き付けていくかのようでした。 一族の一人一人が、どのような最期を遂げたかが、延々と続くかに思える名前と死因の朗読で舞台は暗転しますが、こころに残る舞台でした。 20世紀の前半、第1次世界大戦、第2次世界大戦という二つの大戦の敗戦国としての歴史を潜り抜けたウィーンという街と、ヨーロッパにおけるユダヤ人の歴史と文化を、もう一度復習する必要を強く感じました。本当に、何も知らないまま馬齢を重ねていますね(笑)。 何はともあれ、原作者のトム・ストッパードと演出のパトリック・マーバーに拍手!でした。役者たちもなかなかよかったのですが、多すぎて名前がわからないので。まとめて拍手!ですね(笑) 演出 パトリック・マーバー 原作 トム・ストッパード 装置 リチャード・ハドソン 衣装 ブリジット・ライフェンシュテュール 照明 ニール・オースティン 音楽 アダム・コーク キャスト エイダン・マクアードル フェイ・キャステロー セバスチャン・アルメスト アーティ・フラウスハン 2022年・PG12・イギリス・ウィンダムズ劇場 原題National Theatre Live「Leopoldsta」 2023・01・17-no006・シネリーブル神戸 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023.10.14 17:09:36
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