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ゴジラ老人シマクマ君の日々

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2023.03.03
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カテゴリ:映画 韓国の監督
​チョン・ジェウン「子猫をお願い」元町映画館​ 本当は、まあ、同じ監督の猫のドキュメンタリィーを見るつもりだったのです。で、予告編を観ていて
​「これって、いけてるんじゃないの?」​
​ とかなんとかで、とりあえず観たのですがあたり!でした。
​​ チョン・ジェウンという女性監督の「子猫をお願い」という作品です。20年前の映画だそうです。英語の題というか、原題の「Take Care of My Cat」でしたが、見終えて、そのままの方がよかったんじゃないかと思いました。​​
​​​​ 高校を卒業した五人の少女の旅立ち(?)のお話でした。20年前18歳というのは、わが家の愉快な仲間たちのサカナクンとかヤサイクンとほぼ同世代です。まあ、舞台が韓国のソウルとかインチョン(仁川)あたりなので微妙に違いますが、あの頃の高校生のリアル感は共通していました。
 実家のサウナ風呂屋さんの番台というか、店番をしているテヒ(ペ・ドゥナ)、親のコネで入社したらしい証券会社の雑用係のヘジュ(イ・ヨウォン)、多分、アーティストになりたいのだけれど、仕事のない​ジヨン(オク・チヨン)​、屋台というか、露天というかで怪しげなアクセサリーを売っている双子のピリュ(イ・ウンシル)とオンジョ(イ・ウンジュ)五人です。​​​​

​​​​​ テヒは兄夫婦と両親、弟という家族構成で、父親は金もうけに夢中ですが、身体障碍者の詩人の口述筆記のボランティアをしてたりします。ヘジュは両親が離婚して姉と同居していますが、経済的に困ることはなさそうで着飾ることに夢中ですが、職場では、ただの高卒には未来がないことに気づき始めています。ジヨンは両親と死別しているようで、祖父、祖母と暮らしていますが、明らかに貧しい地域の壊れかけの住居で暮らしています。ピリュ(イ・ウンシル)オンジョ(イ・ウンジュ)の双子の姉妹は、住居こそ出てきますが家族については不明ですが、ガチャな雰囲気を充満させていて、いい味出しています。​​​​​
​​ 話を急に変えますが、映画が始まる前にアランというフランスの哲学者の「定義集」(岩波文庫)を読んでいたのですが、恐ろしいほどに偶然なのですが、ちょうど「友情」の定義​でした。​​​
AMITE 友情
 それは自己に対する自由でしあわせな約束である。この約束によって、自然な行為が、あらかじめ年齢や情念や相剋や利害や偶然を越えて、揺るぎない同意となっている。そういうことはふつう、明言されていないけれども、そういう感じはよくわかる。友情には絶対的な意味での信頼がある。そこから、どんな策略もなしに自由に話し合うことが、自由に判断することができるのである。逆に、条件付きの友情など嬉しいわけがない。(P26)
​ ​映画は、このアランの定義を、あたかも映像化して見せてくれるかの展開で、正直驚きました。​
​​ で、ネコはどこに出てくるのかということですが、ボクの見るところ、「信頼」の象徴の役まわりでしたね。よくある野球とかサッカーをネタにした少年の青春漫画とかだとボールが果たす役割といえばいいのでしょうか。​​
​​​​ 映画では、一番きびしい(?)境遇にあるジヨン子猫を拾うのですが、五人の手から手にわたって生きていく子猫が醸し出すゆらぎのようなものが、互いの信頼のゆらぎを実に素直に表現していて納得でした。​​​​
 それぞれが、ぼくとしては
「そういう娘さんもいたよな。」
 ​とうなづける普通の女性たちといっていいのですが、それぞれの人間のこころの底にある、その人だからこその真摯さ、あるいは、やさしさのようなものを掬い取ろうとしている作品だと思いました。
​​​ チョン・ジェウン監督拍手!でした。それから、高校を出たばかりの少女たちのおバカぶりをなかなかリアルに演じたペ・ドゥナ、イ・ヨウォン、オク・チヨン、イ・ウンシル、イ・ウンジュ拍手!拍手!でした。​​
 上のチラシの写真の少女、ちょっと変わりもののテヒを演じていたペ・ドゥナさんは、40歳を過ぎて刑事になったようで、最近​「べイビーブローカー」​の捜査で張り込みをしているのを見かけましたよ。​

​ 「そうか、彼女は、結局、K察官になったのか!?」​
​​ とかなんとか、頓珍漢なこと考えたりしていましたが、ちなみに、アラン「定義集」によれば、「真摯」という言葉の定義はこんな感じでした。​​​
SINCERITE 真摯
 人が真摯といえるのは、話し相手を疑わないで、ゆっくり自分の考えを説明する時間がある場合だけである。こうした友好的な状況以外では、もっとも真摯な人間は、誤ったことはなにも言わないこと。誤解されかねないことはなにも言わないこと、そして自分の考えていることはすべて、ほとんど黙っていること、またもちろん、確かな考えでないことは必ず黙っていることを、規則とするだろう。​(P150)​​​
​ この定義を写していて気付いたのですみませんが、ちょっと、映画の話に戻りますね。映画の後半ですが、ありえない祖父母殺しを疑われたジヨンが警察につかまります。捜査員の尋問でも、収容された施設の取り調べでも、彼女は完全黙秘を貫き続けるのですが、面会に来たテヒがこんなことをいいます。
​​​「ジヨン、話さないとわからないよ。」​​
​ このことばで、ジヨンははじめて語りはじめたらしく(そのシーンはありません)解放されるのですが、帰る家も家族もすべて失ったジヨン真摯テヒ​友情​とぶつかったシーンだったのですね。
 やっぱり、この映画はかなり分厚い作品でしたね。アランとかも、たまには読み直してみるものですね(笑)
監督 チョン・ジェウン
脚本 チョン・ジェウン
撮影 チェ・ヨンファン
キャスト
ペ・ドゥナ(テヒ)
イ・ヨウォン(ヘジュ)
オク・チヨン(ジヨン)
イ・ウンシル(ピリュ)
イ・ウンジュ(オンジョ)
2001年・112分・韓国
原題「Take Care of My Cat」
日本初公開 2004年6月26日
2023・03・01-no030・元町映画館no164

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最終更新日  2023.07.31 22:32:02
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