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カテゴリ:映画 フランスの監督
クロード・ミレール「ある秘密」元町映画館 「拘留」を観て「これは通わなきゃ!」 と慌てた「クロード・ミレール映画祭」の二作目は「ある秘密」、2007年の作品でした。 「拘留」が1987年に亡くなったリノ・バンチェラや、1982年に亡くなったロミー・シュナイダーの晩年の姿を刻印した映画だったと思うのですが、今回の作品は2012年に亡くなったクロード・ミレール監督自身の晩年の映画の一つでした。 「拘留」では、クロード・ミレールという監督のストーリーのひねり方に驚きながらも堪能しましたが、この作品では、監督が描こうとしている社会や、その歴史の実相を描こうとする、監督自身の歴史観、社会観の奥の深さが半端でない印象を持ちました。 主人公の、映画の現在においてはすでに成人している、小説でいえば語り手のポジションにいるフランソワ(マチュー・アマルリック)という人物が、自分が育ってきた家庭、彼の父マキシム(パトリック・ブリュエル)と母タニア(セシル・ドゥ・フランス)と幼い少年であった彼自身という家族の中で隠されていた「ある秘密」をさぐる過程と、その結果、事実を知ったフランソワと老いた父の姿を描いていた作品でした。 ヨーロッパ社会における「ユダヤ人問題」の「深さ」が1940年代のフランス、ナチスに敗北したヴィシー政権下の社会を舞台に、二組の夫婦と一人の子ども、マキシムと妻アンナ(リュディビーヌ・サニエ)、二人の間の子どもであるスポーツ好きの少年シモン、アンナの兄ロベールとその妻タニアという人物たち登場しますが、やがて、マキシムとタニアが結ばれ、新たに二人の子供であるフランソワが生まれてくるという経緯のなかに「ある秘密」が隠されていました。 アンナ、シモン、ロベールの「死」の経緯と、生き残ったマキシムとタニアの二人がどんなふうに生き残り、結ばれて、フランソワが生まれ育ってきたのか。 映画は、1940年代から、おそらく1960年代にかけて、そこで、その時、何が起こったのか、それをつぶさに見ていたルイーズ(ジュリー・ドパルデュー)という二つの家族の共通の友人女性を配することで、すべてを暴いていきます。 フィリップ・グランベールという人の「ある秘密」(野崎歓訳・新潮クレスト・ブックス)の映画化らしいですが、戦中、戦後のフランス社会を包み隠さず暴いている印象で、歴史に翻弄されて生きてきた老マキシムと成人したフランソワの姿が胸を打ちました。 おそらく21世紀に入って全世界で起こっているのであるでしょうね。歴史の捏造による現在の肯定という風潮に 「ノン!」 という宣言を残そうとでもするかの作品で、あくまでも、歴史の実相に迫ろうとしているかに見える監督クロード・ミレールに拍手!でした。 監督 クロード・ミレール 製作 イブ・マルミオン 原作 フィリップ・グランベール 脚本 クロード・ミレール ナタリー・カルテル 撮影 ジェラール・ド・バティスタ 美術 ジャン=ピエール・コユ=スベルコ 編集 ベロニク・ランジュ 音楽 ズビグニエフ・プレイスネル キャスト セシル・ドゥ・フランス(タニア 母) パトリック・ブリュエル(マキシム 父) リュディビーヌ・サニエ(アンナ マキシムの先妻) ジュリー・ドパルデュー(ルイーズ友人で家族同然の付き合いの独身女性) マチュー・アマルリック(フランソワ キリスト教に改宗したユダヤ人) ナタリー・ブトゥフ 2007年・107分・フランス 原題「Un secret」 日本初公開2012年4月21日 2023・02・15-no019・元町映画館no166 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023.12.24 21:26:18
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