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カテゴリ:映画 日本の監督 タ行・ナ行・ハ行 鄭
早川千絵「プラン75」パルシネマ パルシネマの2本立てで見ました。賛否はともかく話題になっていっている映画です。早川千絵という監督の「プラン75」です。
疲れました。もう、その一言で済ませばいいという思いもありますが、カチンと来たところを記録しておこうとと思います。 まずは、78歳で住居無し、家族なし、貯金なしという孤独で貧しい女性角谷ミチを演じた倍賞千恵子の熱演に拍手!です。死を覚悟した彼女の手のシルエットを映し出した演出も悪くありません。 彼女が、職場で知り合った女性たちとカラオケに行くのですが、そこで、ディック・ミネの名曲「リンゴの木の下で」を歌いますが、死に損なった彼女が夕陽を見ながらもう一度、その歌をたどたどしく歌うシーンも悪くありません。こんな歌詞の歌です。ボクの世代までの人であれば歌える人が、結構、いらっしゃる歌で、元はアメリカの歌だったと思います。倍賞千恵子の歌声を久しぶりに聞きました。 ♪リンゴの木の下で 死をとまどう老人たちの相手をする市役所の職員を演じた、二人の若い俳優、磯村勇斗と河合優実も悪くありません。移民労働者として、より高給な職場を求めて死体処理施設で働くことになるマリア(ステファニー・アリアン)もリアルでした。 にもかかわらず、ボクは何にカチン!ときているのでしょう。 最近、集団自決という言葉が世間をにぎわせていますが、この映画と同じ現象だと思います。人を殺すこと、それが他殺であれ、自殺であれ、それを否定することは人権以前の問題だということが見落とされているのではないでしょうか。人は如何なることがあろうとも、「明日またリンゴの木の下で出会うこと」を保証し合う、「集団自決」や「プラン75」に対する反論の論拠を模索しなければならないにもかかわらず、例えば、集団自決であれば、発言者をメディアから隠したり、情緒的な反論を繰り返すだけで、社会思想として根本を見据えた反論はどこからも出ていないのではないでしょうか。 この映画にも、具体的な反論の描写はありません。人間もまた、死体になれば、ただのゴミであることはクローズアップされて、危機感を煽りますが、生きている人間をゴミとして扱わないためには何が必要なのか、問いかけもありませんし、提示もありません。描かれているのは善意の情緒の兆しだけです。夕日を眺めて「リンゴの木の下で」を口ずさんだ老婆はどこに行くのでしょうね。この映画を見終えた老人たちに対して「皆さん、こうなりますよ、覚悟してくださいね!」とでもいう現状肯定のプロパガンダ映画になってしまう恐れがあることに監督自身が気付いていないのではないかという疑いを強く持ちました。 まあ、もう一つ言えば、文化庁の助成金や笹川日仏財団などという怪しげな団体がスポンサーとして名を連ねていましたが、そういうお金で、こういう作品を撮って大丈夫なのですかということですね。映画館にいたのは、ほぼ該当者ばかりでしたよ。皆さん、帰り道では預金の額や年金の額を思い浮かべていらっしゃったに違いないと思うと、やっぱり、カチン!とくるわけですね(笑) 監督 早川千絵 脚本 早川千絵 脚本協力 ジェイソン・グレイ 撮影 浦田秀穂 美術 塩川節子 音楽 レミ・ブーバル 編集 アン・クロッツ キャスト 倍賞千恵子(角谷ミチ) 磯村勇斗(岡部ヒロム) たかお鷹(岡部幸夫) 河合優実(成宮瑶子) ステファニー・アリアン(マリア) 大方斐紗子(牧稲子) 串田和美(藤丸釜足) 2022年・112分・G・日本・フランス・フィリピン・カタール合作 2023・04・11-no051・パルシネマno56 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024.05.23 23:38:38
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