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アンソニー・ファビアン「ミセス・ハリス、パリへ行く」パルシネマ パルシネマの2本立てで見ました。もう1本は「メタモルフォーゼの縁側」で宮本信子さんがボーイズ・ラブ・マンガにはまったおばあさんを好演していましたが、こちらはクリスチャン・ディオールのドレスにあこがれる戦争未亡人のハリス婦人をレスリー・マンビルという女優さんが明るく演じていて気持ちのいい映画でした。作品はアンソニー・ファビアンという監督の「ミセス・ハリス、パリへ行く」です。
第二次世界大戦の戦後、1950年代のイギリス、たぶんロンドンとフランスのパリが舞台でした。ちょうど、ボクが生まれたころの話です。第二次大戦が終わって数年たっているのですが出征した夫の安否がわからないまま家政婦稼業で、まあ、実に気丈に暮らしているハリス婦人の物語です。なんというか、その気丈さが、映画全編にわたって、明るく発揮されつづけるのがこの作品の好さですね。 クリスチャン・ディオールなんて、まあ、何の関心もないし、なんで、女性の皆さんがあこがれるのかも、実は全く分かっていない無粋老人なのですが、母の世代と思しきミセス・ハリスの、一見、冷静で落ち着ついて生きているかに見える女性の、突如のぶっ飛びかげんに、思わず声をかけそうでした。 「がんばれハリスさん!」 結婚したばかりの夫や恋人の戦死を受け入れざるを得ない体験をした方は日本にもたくさんいらっしゃったわけで、例えば、もう亡くなりましたが、エッセイストの岡部伊都子さんとか、生涯そのことを語り続けられたわけで、この映画のハリス婦人の心にはそういう深い悲しみがあるに違いないのですが、それをクリスチャン・ディオールのドレスへのあこがれとその夢のような実現として、明るく昇華して描いていく映画の展開に好感を持ちました。 でもね、この主人公、今、生きてらっしゃったら100歳近いんですよね。で、「プラン75」とかいう時代になっちゃったんですね。ミセス・ハリスの夢はどこに行っちゃったんでしょうかね。 まあ、なにはともあれ、ハリス婦人を明るく演じたレスリー・マンビルさんに拍手!でした。 いや、ホント、今日は二本ともホッとする作品でよかったですネ(笑)。 監督 アンソニー・ファビアン 原作 ポール・ギャリコ 脚本 キャロル・カートライト アンソニー・ファビアン キース・トンプソン オリビア・ヘトリード 撮影 フェリックス・ビーデマン 美術 ルチャーナ・アリギ 衣装 ジェニー・ビーバン 編集 バーニー・ピリング 音楽 ラエル・ジョーンズ キャスト レスリー・マンビル(エイダ・ハリス) イザベル・ユペール(マダム・コルベール) ランベール・ウィルソン(シャサーニュ侯爵) アルバ・バチスタ(ナターシャ) リュカ・ブラボー(アンドレ・フォーベル) エレン・トーマス(ヴァイ・バターフィールド) ローズ・ウィリアムズ(パメラ・ペンローズ) ジェイソン・アイザックス(アーチー) ロクサーヌ・デュランロクサーヌ・デュラン 2022年・116分・G・イギリス 原題「Mrs Harris Goes to Paris」 2023・03・29・no048・パルシネマno58 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023.08.01 16:17:35
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