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カテゴリ:映画「シネリーブル神戸」でお昼寝
イエジー・スコリモフスキ「EO」シネ・リーブル神戸 なんといいますか、いや、まあ、スゴイ映画でしたね。「ロバ」ってご存知ですか?漢字だと「驢馬」って書くらしいですが、ドン・キホーテに出てくるサンチョ・パンサが乗っているあの動物ですね。そのロバが主人公なんです。時々、雄たけびというか、啼くというか、するのですけど、別になんか言うわけじゃあありません。ただのロバです。
見たのはイエジー・スコリモフスキというポーランドの監督の「EO」です。 で、そのロバくんがサーカスでどんな芸をしているのかよくわからなかったのですが、とにかく、サーカスの舞台でなんかしているシーンから始まりました。相方の女性のセリフを聞いているとイーオーと聞こえます。名前がEOなのですね。 だから、まあ、EOと名付けられて、相方のカサンドラ(サンドラ・ジマルスカ)に愛されて、一緒に芸をしていたロバくんが、破産だか、借金だかのせいで暮らしていたサーカスから連れていかれてしまうんです。で、そこから流浪の旅です。ロバくんのロード・ムービーというわけです。 チラシにもスコリモフスキという監督がその映画に刺激を受けて作ったと書いてありますが、この映画を見ていて思い出したロベール・ブレッソンというフランスの監督の1960年代の映画に「バルタザールどこへ行く」という、とにかく結末が哀しい映画があります。その映画もバルタザールという名前のロバくんの、まあ、いってしまえばロード・ムービーだったわけですが、ボクにはバルタザールの眼差しが焼き付いています。人間とは違う、確かに、ロバの眼だったという印象で、たぶん、そこに揺さぶられて記憶に残っているのだと思います。 で、この作品のイーオーくんについても、印象に残ったのは眼でした。それぞれの場面で泣いたり、呆れたりしているように見えるのです。涙を流しているかのシーンもありました。もっとも、この映画の場合は、一緒に登場する馬とか牛とかの眼とか仕草にもにも表情があるのが、もう一つの特徴でしたが、見ているボクは、そのあたりで眠くなってしまいました。なんとなくボンヤリしてしまいました。 最近見たイオセリアーニという不思議な監督のいくつかの映画とか、中国映画でリー・ルイジュン監督の「小さき麦の花」なんかにも、ロバが出てきます。 イオセリアーニの場合は 「オッ、ロバやん!」という感じで、それぞれの作品にやたらと登場する鳥とか犬とかと同様に、実に唐突に出てくるロバという印象の映画でした。 一方、「小さき麦の花」には家畜としてのロバが、貧しい夫婦の生活を支える動物として登場していました。 その映画を見ながら、日本の、例えば、ボクが育った50年前の但馬地方の農村であれば、農家の玄関を入れば左側が牛小屋で右側が座敷であるような家の中で、一頭だけ飼われていた眼の大きな牛のことを思い出したのですが、前近代というか、一時代古い農耕社会の象徴的な存在で、いかにも、愚かなのですが、働き者で、夫婦から愛され、大切にされているロバでした。 この映画のイーオーくんは、それらとは少し違いました。彼はロバだけど、ロバではないという印象ですね。 トコトコと歩き続けるイーオーくんの眼に映る人間たちの冷たい眼差し、敵意なのか友情なのか馬や牛たちの表情、異様に美しい夕日、飛沫をあげて落下する滝、渦巻く水流、流れの上の橋の真ん中に佇むイーオーくんをボーっと眺めているとエンド・ロールでした。 「入り込めなかったなあ・・・」ため息をついて座り込んでいると、久しぶりに盛況だった客席の人たちが我勝ちに起ち上がり、出口の灯りが場内に差し込み始めました。 「ああ、こういうことなんだ。」 なんとなく、さみしい得心が浮かんできて、やっぱり、イーオーくんに拍手!、イエジー・スコリモフスキ監督に拍手!だと思いました。 まあ、それにしても、納得という気分ではありません。どうしてでしょうね(笑)。 監督 イエジー・スコリモフスキJerzy Sklimowski 脚本 エバ・ピアスコフスカ イエジー・スコリモフスキ 撮影 ミハウ・ディメク 編集 アグニェシュカ・グリンスカ 音楽 パベウ・ミキェティン キャスト サンドラ・ジマルスカ(カサンドラ) ロレンツォ・ズルゾロ(ヴィトー) マテウシュ・コシチュキェビチ(マテオ) イザベル・ユペール(伯爵夫人) 2022年・88分・G・ポーランド・イタリア合作 原題「EO」 2023・05・10-no060]・シネ・リーブル神戸no184 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023.07.15 23:42:49
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