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カテゴリ:週刊マンガ便 「松本大洋」・「山川直人」
松本大洋「日本の兄弟」(マガジンハウス) 松本大洋の「Sunny」を5巻まで読んだのですが第6巻が手に入りません。で、こちらの漫画が手に入って読みました。「日本の兄弟」(マガジンハウス)です。短編集でしたが、収録作品の目次はこんな感じです。 「m」 2010年にマガジンハウス社から出版されている本ですが執筆されたのは1990年代のようで、「何も始まらなかった一日の終わりに」のシリーズから「LOVE? MONKEY SHOW」、「日本の~」のシリーズ(?)まで、まあ、だいたい1995年前後に雑誌とかに掲載された作品のようで、最初のページを飾っているフルカラーの「m」だけが、2000年以後の作品のようです。だから、まあ、全体として、初期というか、中期というか、「鉄コン筋クリート」くらいのころの短編作品集ですね。 絵のタッチというか、雰囲気はずっと松本大洋です。そこがお好きな方もいらっしゃるでしょうね。ボクが松本作品に引き付けられるのは、一つ一つのマンガの時間の描き方と、その方法で描きこまれていく、なんというか、重層化した内面描写ですね。 マンガは「絵」によって描かれるわけですから、世界の輪郭が多層に重ねられていることは目に見えますが、セリフやト書きによって異なった時間を書き込んでいくことによって、といえばいいのでしょうか、「物語」の輪郭の奥にある世界の描きかたが面白いのですね。 この作品集の中の「何も始まらなかった一日の終わりに[祭りの巻]」にあるページです。老人が大きな穴が開いている橅(ぶな)の木の根っこのところに座って、過去が周囲に広がります。 「ここから見る景色も随分と変わった」 時間は、たぶん、何層かに重層化していて、老人は、おそらく「死」と向かい合っているとボクは読んでしまうのですが、マンガの中で老人を見ているのは、通りすがりの猫の眼です。 海の見える高台のベンチとかに、思わず座り込んで過去に浸りながら一休みすることは、徘徊老人にとっては日常的な体験なのですが、そういう老人が、思わず自分を重ねながら眺めてしまう、マンガの中の、この老人を、1995年ですから、まだ20代だったはずの、1967年生まれの松本大洋が描いていることへの驚きというのがこのマンガに対する感想です。ボクは、その年齢の時に「海の見える高台からの風景」のことなど思いもよりませんでした。 まあ、本当に重要なのは、次のページに登場する猫の方なのかなとも思いますが、まあ、そのあたりの真偽は本作をお読みいただくほかありません。 まあ、それにしても、絵も面白いのですが、この漫画家の持ち味はそれだけではないことは確かです。 当分、おっかけは続きそうですね(笑)。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023.05.19 21:41:08
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